成熟社会 都市ストックの再編
1月 27th, 2012

浅草聖天町マップづくりワークショップ

中島研究会では、今学期、浅草聖天町振興会の方々からの依頼を受けて、聖天町のマップづくりのためのワークショップを企画・運営してきました。先日、1月19日に開催された第三回のワークショップでは、いよいよマップのコンセプト(まちの人も楽しめる、聖天町らしい、「地図」で終わらない)、アイデアを提案し、意見交換を行いました。ようやく、方向性が見えてきました。そして、ワークショップ後は地元の方に奥浅草の居酒屋につれていってもらい、懇親会でした。
ワークショップの結果は、毎回、新聞形式にまとめて、振興会メンバー全員に配布してもらっています。まちの人たちの力、アイデア、知識を集めて、まちづくりにつながるマップをつくっていきたいと思っています。お楽しみに。

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1月 20th, 2012

【書評】和辻哲郎『風土』 その2

 本書は、著者和辻哲郎が海外を旅した際の実感と、その旅先でハイデッガーの「時間と存在」という本に出会ったことを契機として「風土論」という新しい概念を考察したものである。主にアジア地域を「モンスーン」、アラビア・アフリカ・モロッコなどの乾燥地帯を「砂漠」、ヨーロッパ地域を「牧場」と定義付け、これらの3つの類型を主軸とし、それぞれの風土における人間の性質、芸術や宗教の志向などを論じている。それぞれの土地に存する「風土」は、気候や食物の恵みなどの既にそこに存在した「自然」と、その自然と共に生きる「人間」との間柄を認識する方法であり、「自然」と「人間」は独立した個体同士だという概念を否定するものである。人間は自然と対峙・共存してこそ今の「人間」の在り方が成り立っており、この関係性の中での対峙・共存の仕方、知覚・認知の仕方がその土地固有の「風土」である、ということである。

 本書の中での和辻の主張は、後続の学者によって多々批判されている個所もあるようであるが、大枠として正しく、70年前に書かれた書物であるからと言って現代に応用できないなどということは決してない。そもそも地理的な関係で必然的に生まれてきた気象や自然というものがあり、その中で人間(この場合、人類という動物的な単語で示すのではなく、人格を持った個人という意味で「人間」という表現を用いることを強調しておきたい)が生活を営み始めたことは、人間生活の根源に存在するすり替えられない事実であり、その土地固有の自然と協調して、人間は歴史を営んできて、その結果としての現在がある。どんなに時代が変わっても、その「風土」によって育まれた「人間」の、極めて根本的な特性の部分は、古くからの風土によって現代でも規定することが可能だと考える。

 このことは、考えてみれば当たり前で、気象や自然との対話の中で私達は無意識的に均衡を図りながら生活しているのだが、そのことをあえて言語で論じ、体系化して見せたという点で、和辻の取り組みは大変面白いものであったと言える。個人的にはこの本を通じて、改めて人間とその周りの環境との間柄と、その付き合い方が形成する人格や文化について、考えることができたことがとても新鮮であった。

 この議論に対して後続の学者から異論は多々あることは先に述べたが、和辻の議論に明確な根拠がなく、論理性が疑わしいということよりも、こういった視点を改めて認識し、またその視点を活用して人間を論じたという点に和辻の功績は存在する。都市に対して興味を持ち、研究対象としていく私達は、本書の和辻の主張からその「視点」をくみ取り、実際研究に当てはめ、「風土」という観点からも都市を見てみる事が出来るか否か、そこが大切であるのではないかと感じた。

和辻哲郎『風土 人間学的考察』岩波文庫、1979年 (※原著は1935年)
文責:大沼芙実子 (総合政策学部3年)

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1月 20th, 2012

【書評】藤井聡・谷口綾子『モビリティ・マネジメント入門』

 本書は、1990年代後半からヨーロッパやオーストラリア、そして日本で始められ、発展してきた、「コミュニケーション」を重視する新しい交通政策の考え方―「モビリティ・マネジメント(=MM)」―の概要と各事例を、大きく海外・国内に分けて紹介したものである。

 本書では、地域モビリティの衰退や渋滞等のさまざまな交通問題を、単なる技術やシステムの問題ではなく、「人間」が引き起こした社会的な問題と捉えている。そのうえで、コミュニケーション施策などの「ソフト」施策と、交通システムの運用改善や整備などの「ハード」施策を適切に組み合わせながら、当該の地域や交通を、「過度に自動車に頼る状態」から、「公共交通や徒歩などを含めた多様な交通手段を適度に(=かしこく)利用する状態」へと変えていく一連の取り組みを、モビリティ・マネジメントと定義している。

 モビリティ・マネジメントの中心であるコミュニケーション施策の一般的な流れは、次の通りである。

①  MM実施者から、一人ひとりに接触を図り、参加者から情報を提供してもらう。

②  MM実施者の方で、得られた情報を踏まえて、提供する情報・メッセ―ジを改めて加工する。

③  MM実施者から、加工した情報、メッセージを提供(フィードバック)する。

 以上はあくまでも一般的な例であって、実施規模や土地条件によって施策は変わるが、対象となる一人ひとりに、個別的、かつ、大規模にコミュニケーションをとることが、MMにおけるコミュニケーション施策の特徴である。

 本書の、「モビリゼージョンが進行したのは、交通事業者がモビリゼーションに対抗する有効な処置を取れなかったからである」という指摘はとても興味深く、交通事業者が顧客主義のもと、ホスピタリティーを持って利用者と真摯に向かい合うことが必要だと感じた。環境への配慮から公共交通機関の存在感が増している昨今において、モビリティ・マネジメントという考え方は、さらにその流れを加速させる契機になるのではないか。

藤井聡・谷口綾子『モビリティ・マネジメント入門―「人と社会を中心に捉えた新しい交通戦略」』、学芸出版社、2008年
文責:湯浅資(総合政策学部1年)

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1月 20th, 2012

【書評】和辻哲郎『風土』 その1

 その土地の風土はその土地の人間に深く関係する事を改めて学んだ。従って、風土は単に、人間から独立した自然ではなく、人間の有り方であるという事が分かる。本書では、大まかに風土を分けて考察しているが、自然は決して普遍的ではなく、無常であって、唯一無二である。なので、風土による歴史的人間の構造は変わる事のない事実ではあるが、その人間は風土と共に発展するのである。

 その事を本書から学んだ上で、日本の各地方、或はそれぞれのまちにおいても当然風土は細かいところで特性は違い、人間の構造も詳細において特性を変えるのだと考える。だからこそ、まちの構造も、それぞれの風土、即ちそれぞれの風土的人間によって、構造を最適化していかなければならない。まちづくりにおいて、その土地の人間に着目する事はとても重要な調査であるが、それは同時に風土的人間考察も必要である事を表す。それは歴史的・社会的現実であり、捨て去る事のできない人間の本質を見極める上で重要であり、そうした上でのまちづくりは、持続可能なまちを創出するきっかけとなる。

 また、私が本書から発展して考えた事は、世界がボーダーレス化していく中で、各人間は風土的人間という本質を持ちながらも、様々な「ところ」を移動する過程で、風土的人間において発展を多く繰り返す事になる。この過程を繰り返す人間が増えている事は間違いない。従って、各風土においても、純粋な風土的人間の存在が少なくなるのではないかと考える。その代表的な例はアメリカだ。アメリカ大陸においては、多民族国家であるが故に、アメリカの風土がそれぞれの風土的歴史を持つ人間をどの様に発展させていくのか、という疑問にも繋がった。この疑問は、今後『風土』を読み深める意味でも、風土を更に理解していく上でも、考え続けていきたいと思う。

和辻哲郎『風土 人間学的考察』岩波文庫、1979年 (※原著は1935年)
文責:宮地智也 (総合政策学部3年)

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1月 7th, 2012

待乳山聖天の大根まつりと革のしおり

革のしおり

にぎわう境内。

本日、午前中、待乳山聖天さんの大根まつりに参加してきました。現在、マップづくりのお手伝いをしている浅草聖天町振興会の一員として、ピンクのジャンバーを着て、聖天町にある素材、道具を活用した手作りの「革のしおり」を1000枚、配布しました。趣旨としては「皮革のまち」聖天町からの年賀状ということで、「2012」「SHOTEN」の文字と龍の絵を刻印。今年は大根が振舞われただけでなく、東北復興の物産展も同時開催したので、どうやら2000人以上の人が聖天さんに訪れたもよう。しおりも人気を博したようで、用意した1000枚はすぐになくなってしまいました。正月返上でしおりを作成した研究会聖天町チームの皆さん(+助っ人)、お疲れさまでした。今後も、このまちに溢れている皮革をはじめとするさまざまな資源を活かして、「訪れたくなる魅力的なまち」づくりを支援していきます。

聖天町チーム

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12月 31st, 2011

都市遺産班 藤沢防災建築街区パンフレット作成

都市遺産班パンフレット

研究会の3年生4人(石川亮平、河本雄介、河野和彦、宮下貴裕)は先学期から共同で藤沢駅南口の、はぜのき広場を中心に名店ビル、ダイヤモンドビル、C-Dビルの3つのビルからなる通称「391街区」の研究を進めていますが、先のORFに合わせて、簡単なパンフレットを作成しました。
彼らの研究の基本コンセプトは「都市計画遺産」ないし「都市遺産」。非戦災都市である藤沢では、昭和30年代後半から昭和40年代前半にかけて、全国に先駆けて、都市改造事業として、駅前広場の創出を大きな目的とした駅南口一帯の土地区画整理事業が実施されますが、その際、防災建築街区が合わせて指定され、その一部である391街区では、その基本計画で採用された中庭型街区という意欲的な空間像がそのまま実現しています。ビル、街区の空間構成の特徴とともに、その都市的な意味を都市計画史や現代都市史の視点から解き明かし、今後の継承や再生に向けた提案をしていきたいと考えています。

藤沢防災建築街区基本計画(1962)/藤沢市役所所蔵・中島撮影

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12月 19th, 2011

『建築雑誌』に掲載 研究会で読んだ本の抄録

中島研究会では、昨年、ニューアーバニズムの入門書として、『New Urbanism Best Practice Guide』という本を輪読しました。その成果は、日本建築学会の学会誌『建築雑誌』2010年11月号に掲載された文献抄録にまとめました。また、先学期、研究会の学部2年生、渡邊美香さんが取り組んだ『Ecological Urbanism』については、同じく『建築雑誌』の2011年12月号に文献抄録というかたちで掲載されました。英語を読むだけで何か疲れてしまった感もなきにしもあらずですが、ともにオムニバス的、俯瞰的な書物で勉強になりました。前者はCiNii経由ですでに公開されております。後者も1年経過すれば見られるようになるようです。
さて、この研究室のブログに、これから研究会メンバー(主に学部の2~4年生)たちによる、都市計画関係の本の簡単な書評を載せていくことにします。研究会ではフィールドワークなくして都市計画やまちの研究なし、といつも言っているのですが、一方で、常日頃から書物には親しむように、とも。

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11月 22nd, 2011

富士吉田プロジェクトの中間報告

富士吉田商工会議所と富士吉田市からの依頼を受けて、今年度から中島研究会で取り組んでいる富士吉田における富士山駅を起点とした富士信仰を活かした観光施策に関する調査の中間報告会が、2011年11月21日に開催されました。今回は、食と農に関する調査を担当する玉村先生の研究会と合同での発表でした。中島研は、学部3年の赤松、海野、学部2年の渡邊、朝香、学部1年の湯浅の5名が分担して、「歩く上吉田プロジェクト」について説明しました。富士山に向かって1キロ続く富士道を、いかに飽きさせずに楽しく歩けるようにするのか、が課題で、たつ道のオープン化や御旅所ひろばなどを提案しました。これらを本当に実現可能なプロジェクトにしていくためには、これから地域のさまざまな方々と丁寧に丁寧につめて検討していかなければならないことが沢山あります。改めて、頑張らねば、と思いを強くした次第です。また、玉村研のプラットフォーム構築を目指した現代富士講の提案は、非常に説得力があり、中島研も大いに参考に、そしてそのプラットフォームにのせられるものはのせていきたいと思います。

中間報告における全体構想案

帰り道の富士山。

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10月 1st, 2011

第一回浅草聖天町活性化委員会

9月29日の夜、浅草馬道区民館にて、一葉桜聖天町振興会の活動の一つとして、第一回活性化委員会が開催されました。中島研究会は、今学期、この活性化委員会の進行役を務めます。第一回会議には、研究会メンバー全員で参加し、3つのテーブルに分かれてそれぞれのテーブルのファシリテーターとして、「活性化のイメージ」について、振興会の皆さんの意見を引き出し、話し合いを進めました。聖天町は基本的には問屋街ですので、一言に「活性化」といっても、それぞれ考えていることに違いがあること、他のまちとは違う考え方が必要であることなどが見えてきました。今後、委員会を月1ペースで開催して、来年度以降、実行可能な具体的なアイデアを見出していきたいと考えています。

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9月 19th, 2011

夏のフィールドワーク(気仙沼・富士吉田・島原・大連)

夏休みの終わりがやってきてしまいました。
下記、この夏の、学生たちとのフィールドワークの備忘録です。 

■気仙沼プロジェクト(8月11日~13日)
5月から開始したSFC気仙沼復興プロジェクト、建築、都市、農村、観光、情報等に関する様々な研究会の教員、学生たちが協働で動いてきました。8月には、港けせんぬま復活祭に合わせて、それまでの調査成果の発表やお祭り支援などを目的に、気仙沼を訪問しました。中島研からは院生の平野、学部生の久保、渡邊が参加しました。復興のキーパーソンに集まって頂いたさんぞかだりやお祭り会場の脇での提案展示を通して、改めて地域の方の思いを直にお伺いすることができました。今後の復興をどのように支援できるのか、行動で示していきたいです。なお、小林研、池田研、厳研の有志と中島研学部生メンバーが主に参加した「気仙沼復興まちづくり調査」(2011年6月)のまとめは、下記にアップしております。
http://kesennuma.sfc.keio.ac.jp/pjkesen/news/2011/07/post-7.html
 

気仙沼小学校脇での提案カードの展示

 ■富士吉田プロジェクト(8月25日~29日)
「富士山信仰と富士山駅を活かした観光振興」をテーマとして、今年から始まったプロジェクトです。富士吉田市の職員の方にサポートして頂きながら、富士吉田の火祭り、すすき祭りの見学、御師まちの資源調査、富士吉田口からの登山体験(豪雨の中、軽装はいけませんでしたね)、関係者へのヒアリング等、充実した調査を行うことができました。中島研の学部生の赤松、海野、渡邊が参加しました。28日夜には、商工会議所の委員会にて、中島と赤松で調査成果を発表し、いろいろなご意見を頂きました。参加したメンバー一同、富士吉田の奥深さに魅せられ、今後の継続調査と提案に向けての展望を得ることができました。しっかりした提案を行うために、今学期、調査を続けていきます。 

富士吉田の火祭り

 ■島原プロジェクト(8月29日~9月3日)
慶應SFCとして長崎県とともに取り組んでいる地域力向上プロジェクトの一環として、一週間にわたって、島原の資源調査を実施しました。参加した学生は9名、中島研からは院生の緒方、学部生の池田、内田、大沼、福島の5名でした。こちらも島原市役所の方々の多大なご協力により、楽しく、充実した調査を行うことができました。何よりも島原の大地の恵みになかば圧倒されながら、まちを歩き回り、多くの人のお話をお伺いし、学生ならではの若い視点、外の視点からの提案をまとめました。一週間でようやくとっかかりが見えてきたところです。今後、提案の内容を精査し、実現可能なアイデアをどしどし出していきたいと思っています。 

生活に根付いた水文化(浜の川湧水)

■大連プロジェクト(9月14日~18日)
お隣の池田先生が建物の設計に携わってこられた大連郊外の龍門温泉の、温泉街としての今後の開発のありようを考えるための調査、計画案づくりを、慶應SFCの学生3名と大連理工大学の学生5名で行いました。中島研からは院生の平野が参加しました。初めて訪れた中国の農村部、郊外リゾートはとても新鮮でした。学生たちはすぐに打ち解けて仲良くなり、共同でしっかりした調査、そしてプランの骨子を作成してくれました。中国の学生たちの、知に対するとても真面目な態度には、大いに刺激を受けました。10月に開催予定の大連でのシンポジウムで成果を発表する予定です。

農村集落でのヒアリングの様子

 

以上になります。
各フィールドワークでは、現地の関係者の方々に多大なご協力を頂きました。
改めて、感謝申し上げます。

by naoto.nakajima | Posted in プロジェクト, 富士吉田, 島原, 授業全般, 都市探訪, 震災復興 | 夏のフィールドワーク(気仙沼・富士吉田・島原・大連) はコメントを受け付けていません |













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