成熟社会 都市ストックの再編
1月 20th, 2012

【書評】和辻哲郎『風土』 その1

 その土地の風土はその土地の人間に深く関係する事を改めて学んだ。従って、風土は単に、人間から独立した自然ではなく、人間の有り方であるという事が分かる。本書では、大まかに風土を分けて考察しているが、自然は決して普遍的ではなく、無常であって、唯一無二である。なので、風土による歴史的人間の構造は変わる事のない事実ではあるが、その人間は風土と共に発展するのである。

 その事を本書から学んだ上で、日本の各地方、或はそれぞれのまちにおいても当然風土は細かいところで特性は違い、人間の構造も詳細において特性を変えるのだと考える。だからこそ、まちの構造も、それぞれの風土、即ちそれぞれの風土的人間によって、構造を最適化していかなければならない。まちづくりにおいて、その土地の人間に着目する事はとても重要な調査であるが、それは同時に風土的人間考察も必要である事を表す。それは歴史的・社会的現実であり、捨て去る事のできない人間の本質を見極める上で重要であり、そうした上でのまちづくりは、持続可能なまちを創出するきっかけとなる。

 また、私が本書から発展して考えた事は、世界がボーダーレス化していく中で、各人間は風土的人間という本質を持ちながらも、様々な「ところ」を移動する過程で、風土的人間において発展を多く繰り返す事になる。この過程を繰り返す人間が増えている事は間違いない。従って、各風土においても、純粋な風土的人間の存在が少なくなるのではないかと考える。その代表的な例はアメリカだ。アメリカ大陸においては、多民族国家であるが故に、アメリカの風土がそれぞれの風土的歴史を持つ人間をどの様に発展させていくのか、という疑問にも繋がった。この疑問は、今後『風土』を読み深める意味でも、風土を更に理解していく上でも、考え続けていきたいと思う。

和辻哲郎『風土 人間学的考察』岩波文庫、1979年 (※原著は1935年)
文責:宮地智也 (総合政策学部3年)

by naoto.nakajima | Posted in 授業関係, 書評・文献紹介, 研究会B(1) 都市計画・都市デザイン | 【書評】和辻哲郎『風土』 その1 はコメントを受け付けていません |

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