成熟社会 都市ストックの再編
9月 19th, 2011

夏のフィールドワーク(気仙沼・富士吉田・島原・大連)

夏休みの終わりがやってきてしまいました。
下記、この夏の、学生たちとのフィールドワークの備忘録です。 

■気仙沼プロジェクト(8月11日~13日)
5月から開始したSFC気仙沼復興プロジェクト、建築、都市、農村、観光、情報等に関する様々な研究会の教員、学生たちが協働で動いてきました。8月には、港けせんぬま復活祭に合わせて、それまでの調査成果の発表やお祭り支援などを目的に、気仙沼を訪問しました。中島研からは院生の平野、学部生の久保、渡邊が参加しました。復興のキーパーソンに集まって頂いたさんぞかだりやお祭り会場の脇での提案展示を通して、改めて地域の方の思いを直にお伺いすることができました。今後の復興をどのように支援できるのか、行動で示していきたいです。なお、小林研、池田研、厳研の有志と中島研学部生メンバーが主に参加した「気仙沼復興まちづくり調査」(2011年6月)のまとめは、下記にアップしております。
http://kesennuma.sfc.keio.ac.jp/pjkesen/news/2011/07/post-7.html
 

気仙沼小学校脇での提案カードの展示

 ■富士吉田プロジェクト(8月25日~29日)
「富士山信仰と富士山駅を活かした観光振興」をテーマとして、今年から始まったプロジェクトです。富士吉田市の職員の方にサポートして頂きながら、富士吉田の火祭り、すすき祭りの見学、御師まちの資源調査、富士吉田口からの登山体験(豪雨の中、軽装はいけませんでしたね)、関係者へのヒアリング等、充実した調査を行うことができました。中島研の学部生の赤松、海野、渡邊が参加しました。28日夜には、商工会議所の委員会にて、中島と赤松で調査成果を発表し、いろいろなご意見を頂きました。参加したメンバー一同、富士吉田の奥深さに魅せられ、今後の継続調査と提案に向けての展望を得ることができました。しっかりした提案を行うために、今学期、調査を続けていきます。 

富士吉田の火祭り

 ■島原プロジェクト(8月29日~9月3日)
慶應SFCとして長崎県とともに取り組んでいる地域力向上プロジェクトの一環として、一週間にわたって、島原の資源調査を実施しました。参加した学生は9名、中島研からは院生の緒方、学部生の池田、内田、大沼、福島の5名でした。こちらも島原市役所の方々の多大なご協力により、楽しく、充実した調査を行うことができました。何よりも島原の大地の恵みになかば圧倒されながら、まちを歩き回り、多くの人のお話をお伺いし、学生ならではの若い視点、外の視点からの提案をまとめました。一週間でようやくとっかかりが見えてきたところです。今後、提案の内容を精査し、実現可能なアイデアをどしどし出していきたいと思っています。 

生活に根付いた水文化(浜の川湧水)

■大連プロジェクト(9月14日~18日)
お隣の池田先生が建物の設計に携わってこられた大連郊外の龍門温泉の、温泉街としての今後の開発のありようを考えるための調査、計画案づくりを、慶應SFCの学生3名と大連理工大学の学生5名で行いました。中島研からは院生の平野が参加しました。初めて訪れた中国の農村部、郊外リゾートはとても新鮮でした。学生たちはすぐに打ち解けて仲良くなり、共同でしっかりした調査、そしてプランの骨子を作成してくれました。中国の学生たちの、知に対するとても真面目な態度には、大いに刺激を受けました。10月に開催予定の大連でのシンポジウムで成果を発表する予定です。

農村集落でのヒアリングの様子

 

以上になります。
各フィールドワークでは、現地の関係者の方々に多大なご協力を頂きました。
改めて、感謝申し上げます。

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8月 14th, 2011

まちづくり論【2011年夏学期まとめ4】

今学期の学部生向け講義「まちづくり論」は、例年より一ヶ月遅れの5月から開始しましたが、初回に集まった学生は何と500名・・・東日本大震災を受けて、都市計画やまちづくりへの関心が大きく高まっていることを肌で実感しました。結局、選抜した200名の学生とともに、都市計画やまちづくりを通じて、この震災からの復興について考える授業ということにしました。基本的な内容は昨年から引き続いて、「都市計画」と「まちづくり」という構図を用いて、それぞれの理念や方法を事例を通じて学ぶものでしたが、毎回授業の冒頭ではその週の震災復興関連のニュースを解説し、最終レポートも、復興に関するアイデアを提出するものとしました。本年度のゲストレクチャーは、長年、谷中のまちづくりに尽力されてこられた椎原晶子さん、復興のための都市計画に一家言をお持ちの首都大学東京の饗庭伸さんにお願いし、それぞれ非常に充実したお話を頂きました。この場を借りて、改めて御礼申し上げます。今年のまちづくり論は、2011年の今だからこその緊張感と使命感を持って担当した、個人的には大いに記憶に残る授業となりました。授業を聞いてくれた人の何人かが、実際に今後も被災地の復興や都市計画、まちづくりに関心を持ち続けて、自主的、主体的にそうした世界に飛び込んでいって、世の中の役に立ってくれたらいいな、と期待しております。

授業記録

第1回  まちづくり論序 (5月12日)

第2回  都市計画とは何か (5月19日)
第3回  近代都市計画の世界史 (5月26日)
第4回  日本における都市計画の誕生と展開(6月2日)
第5回  日本における都市計画の展開と現在(6月9日)
第6回  中間総括 地元・藤沢の都市計画を通じて (6月16日)

第7回  まちづくりの誕生と展開 (6月23日)
第8回  まちづくり事例1 鞆の浦(広島県福山市)(6月30日)
第9回  まちづくり事例2 谷中(東京都台東区)(7月7日)※椎原先生レクチャー
第10回 まちづくりの特質+まちづくり事例3 柏の葉(7月10日)

第11回  まちづくりと都市計画のこれから(7月14日)
第12回  東日本大震災からの復興を考える1(7月21日)  ※饗庭先生レクチャー
第13回  東日本大震災からの復興を考える2(7月28日) ※学生発表

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8月 4th, 2011

デザインスタジオ「391街区の再生」【2011年夏学期まとめ2】

池田靖史先生、登坂誠先生(日建設計)とともに担当する学部スタジオ「都市と建築」では、今学期は藤沢駅前の一角の通称「391街区」の再生をテーマとしました。391街区は、1960年代に完成した防災建築街区であり、藤沢名店ビル、ダイヤモンドビル、C-Dビルという3つのビルとそれらが取り囲む中庭(はぜのき広場)から成っており、研究会B(1)でもその保全的再生に関する研究を進めています。スタジオでは、駅前の公共性の再考(特に、3.11以降の)も念頭に置き、藤沢駅前の再生の起爆剤となるような街区のありかたを求めて、自由に計画、設計してもらいました。
8月3日の夕方には、3つのビルのオーナーさんたちにご協力を頂き、オーナーさんたちの前で学生が自分の作品をプレゼンテーションするという、大変貴重な成果発表会を行うことができました。オーナーさんたちからは、一方で実現可能性の検討、一方で若者らしい大胆さの追求という、両者を的確にご指摘いただきました。一週間前の学内最終ジュリーでは、図面等未完成のものも多く、プレゼンもたどたどしく、正直、オーナーさんの前での発表、やめた方がよいのでは・・・・とも思いましたがが、一週間後、ふたをあけてみれば、皆、立派なパネルと模型、そしてプレゼンテーションを行ってくれました。改めて、学生たちの潜在能力の高さと、教育の場としてこうした社会との接点を用意することの重要性を思ったわけです。
ご協力いただきました、各ビルの皆様、どうも有難うございました。

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2月 1st, 2011

二つの研究会のまとめ

今学期もあっという間に終わり、もう2月になってしまいました。
二つの研究会も、それぞれ今学期のまとめ(最終発表)を行いました。

■研究会B(1) アーバニズムとプレイス
こちらの研究会では、都市デザイン、都市計画、まちづくりに関して、研究会としての研究テーマ、ないし各自それぞれの研究テーマを立てて、チームで、あるいは個人で進めてきました。1月31日の午後、その最終発表会を行いました。

今学期の研究内容は…

1 藤沢市太平台風致地区におけるクロマツ景観の分析とその保全のための提案
藤沢市の辻堂地域にある太平台風致地区は、かつては松の樹林におおわれた砂丘でしたが、戦後、住宅地開発が進み、今ではすっかり住宅地となりました。昭和30年代の風致地区指定も、宅地開発に伴い、減少が予想されたクロマツの保護が目的でした。学部3年生1名と2年生2名のチームで、1)風致地区指定の経緯、2)現在のクロマツの分布とその景観的特徴、3)1960年代以降の敷地の細分化の経緯とクロマツの残存状況との関係、4)地域における近年のクロマツ保護の活動、等について調査し、クロマツ景観を保全していくための方法について、考察を行いました。

2 藤沢総合都市計画の現代的意義に関する研究
藤沢の戦後の都市形成の基盤となったといわれ、全国的にも最初期の総合的な都市計画として言及されることのある藤沢総合都市計画(1957年制定)。今学期は主に学部2年生3名が中心となり、都市計画のイロハを学びつつ、この藤沢総合都市計画が藤沢の都市形成に果たした役割、その現代的な意義について、1)藤沢の市制以降の歩みと藤沢総合都市計画の目標との関係の解明、2)施設整備と市街化制御の両側面からの達成度の評価と空間実態の把握、3)これまでの市民満足度調査等の結果に基づいた市民からの総合都市計画への評価を通じて、考察を行いました。

3 銀座における通り、界隈ごとの景観特性に関する基礎的調査
銀座デザインルールには、銀座の界隈ごと、通りごとの特徴を踏まえることがうたわれていますが、各界隈や通りの景観特性についてはおおざっぱにしか記述されておらず、内容が不足しています。そこで、今学期は、学部3年生3名で、まずは銀座を構成する全ての通りを踏査し、それぞれの街路の景観的特徴をカルテにまとめる作業を行いました。銀座はなかなか手ごわく、まだまだ景観特性はつかめていない段階ですが、今後、しっかりと進めていく予定です。

4 湘南映画祭の可能性 〜地域ブランディングとまちづくりの複合型地域カルチャーイベントとして~
映像関係に関心があり、その方面に就職予定の湘南育ち、鎌倉在住の学部4年生が卒業プロジェクトとして進めた研究です。内容としては、実証的というよりは、提案的なもので、国内の映画祭の課題や要件等を文献や独自のアンケート調査から明らかにしたうえで、藤沢市全域を対象とした湘南映画祭の開催を、複合型地域カルチャーイベントという独自の枠組みのもとで思い切って提案しました。

5 桃園川緑道における実質的緑量と心理的緑量の関係に関する研究
これも卒業プロジェクトとして進めた研究で、杉並区の桃園川緑道を対象として、写真評価アンケートという手法を用いて、緑視率と心理的緑量、歩きたくなる意欲との間の関係について、分析しました。ただ緑が多ければそれでいいというわけではない、という問題意識のもと、緑がどうあれば緑豊かに感じられ、そしてそこを歩きたくなるのか、というなかなかはっきりとは解き難い問題に対して、正面から取り組んでみました。

6 郊外型大学キャンパスが都市形成に与えた影響に関する研究
大学キャンパスの都心回帰が続く中、郊外型大学キャンパスの評判はあまりよくありません。しかし、こうした郊外型大学キャンパスも実際には周囲の都市形成に様々に関係し、寄与していきたのではないか、という問題意識のもと、八王子市を題材にして、郊外型大学キャンパスと地域との関係を、ソフトとハードの両方から把握しようと作業を開始したところです。学部3年生の個人研究プロジェクトです。

7 地域主導の渋谷川再生を念頭に置いた河川再生事例研究
コンクリート三面ばりの渋谷川を再生させるためには、どのような行動を起こせばいいのか、を考えるために、他地域で参考になりそうな試みからヒントを得ようという研究です。今学期は三島市の街なかがせせらぎ事業に着目し、源兵衛川を中心として現地を見学し、担当者やNPO三島グランドワークの方々にヒアリングを行い、その内容をまとめました。学部3年生の個人研究プロジェクトです。

8 伝統的町並み地区における文化体験型宿泊施設の実態と可能性
こちらは研究会には所属せず、独自に卒業プロジェクトを進めた学生の成果になります。歴史的な町並みが今でも残るが、人口が減り、空き家が増加しているような地域の再生に寄与するような、交流人口の増加およびその質的高まりを目指す「文化体験型」の宿泊施設に着目し、その実態を調査しました。特にケーススタディとして福山市鞆町の「御舟宿いろは」をとりあげ、オーナーの方にご協力を頂き、滞在調査、アンケート調査を行いました。

以上です、何れの研究も(卒業プロジェクトも含む)端緒についたばかりで、まだまだこれから、という感じではありましたが、それでも報告内容はなかなか興味深く、これからが期待されます。

■研究会B(2) まちづくりの現場を支援する
もう一つの研究会では、奥浅草の聖天町を対象として、そこでの素材型地場産業である「皮革」を活かしたまちづくりの方策について検討し、昨年12月には実験的なワークショップを開催しました。1月16日の午後、浅草聖天町振興会の会合にて、ワークショップの結果と今後の活動について地元の方々の前で報告し、意見交換を行いました。地元の方が何を望み、われわれはそれに対し来年度以降、どのようなかたちで支援できるのか、いろいろと課題や手掛かりが見えた会となりました。また、来年度は、聖天町を含む浅草観音うらおよびその周辺一帯の観光まちづくりを進めるために昨年、設立された奥浅草観光まちづくり協会の取り組みに積極的に深く関わりながら、奥浅草のまちの魅力を顕在化させ、賑わいを生みだす活動を展開していきたいと考えており、早速、学生たちは協会の理事さんとの打ち合わせを開始しています。地元の期待にこたえられるよう、頑張りたいと思います。

聖天町での会合の後、待乳山聖天に参詣しました。

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12月 23rd, 2010

2010年、ゲストレクチャー御礼

本年秋学期は、大学院の「都市デザイン論」、「環境の変遷」という二つの講義もの、「応用環境デザイン」というスタジオ(とはいえ、なかなか変わった形式で、結局、個別にエスキスを展開中)、学部の二つの研究会、そして「都市と地域の未来」という本来は講義ものの授業を大幅に変更した都市スタジオ入門を担当しています。ということで、明らかに私のキャパシティを凌駕しているように思われるわけですが、学生に少しでも幅広い多様な知見を得てもらおうという趣旨で、各授業、様々な方にゲストレクチャーをお願いすることができ、年内に関しては、何とか担当の任を果たしました。この秋学期に、大変遠いところSFCまでお越し頂いたのは、下記の先生方です。改めて、心より御礼申し上げます。

研究会B(1) Urbanism & Places(学部)

○岡村祐さん(首都大学東京都市環境学部)
景観研究のイロハから、実はSFCのすぐお隣、茅ヶ崎市での景観まちづくり活動まで、ご自身の幅広い活動を大変分かりやすく講義して頂きました。特に岡村先生監修の秀逸な景観まちづくりマップは、参考になりました。湘南台、藤沢でもこうした活動を進めたいものです。

○野上陽子さん(株式会社日本設計都市計画群)
民間組織設計事務所での都市開発プロジェクトに関わる仕事についてご紹介頂いたのに加え、SFCのOGということで、社会に出てから感じたSFC生の強みについても、語って頂きました。皆、勇気づけられたのでは?

都市と地域の未来(学部・修士)

○三牧浩也さん(柏の葉アーバンデザインセンター)
故北沢猛先生の最も大きな遺産の一つである柏の葉アーバンデザインセンター(UDCK)をマネジメントしている三牧さんに、UDCKでの様々な取り組みについて、ご説明を頂きました。スタジオで皆が考えていることよりも、UDCKが実践していることの方が自由で楽しそうだという…最後、誰のために活動しているのか、「行政のためでも市民のためでもない、『都市』のための仕事は成り立つか」という問いかけは、とても新鮮でした。

都市デザイン論(大学院)

○関谷進吾さん(東京大学大学院新領域創成科学研究科)
SFC出身の若き研究者ということで、今、まさに博士論文として仕上げようとしている「アーバンデザインセンター論」について、お話を頂きました。アメリカ、欧州を中心に、各国のアーバンデザインセンターを、ふんだんにビジュアルを駆使して紹介してくれました。早いうちに海外に出て多様な文化に積極的に触れること、の重要性をご自身の経験に基づいて、アドバイスしてくれました。

○鵜飼修さん(滋賀県立大学環境科学部)
コミュニティアーキテクトとは何か、というテーマで、鵜飼先生自身の歩みと、現在担当されている近江環人講座の取り組みについて、講義を頂きました。予想したとおり、「コミュニティアーキテクト」という職能をめぐって、大学院生たちとの活発な議論も展開して下さいました。

環境の変遷(大学院)

○松原康介さん(筑波大学大学院システム情報工学研究科)
SFC出身で、都市計画史・都市保全計画分野の研究者として国際的にも大活躍されている松原先生に、フェスという伝統都市の姿、そしてその近代化、現代化についての講義を頂きました。本を読ませてもらっておりましたが、やはり直接お伺いするのが一番分かりやすく、頭にも残ります。さて、SFCの大学院生の中から、松原先生に続く人をどう輩出するのか、それはやりがいのある仕事の一つです。

○川本智史さん(東京大学大学院工学系研究科)
9月の環境デザイン・フィールド・ワークショップでイスタンブールにて大変お世話になったのに続いて、図々しくも講義まで頼んでしまいました。イスタンブールの長い長い都市の歴史を70分ほどの短い時間でお話して頂きました。イスタンブールの近代、そして現代は、日本のそれとの比較の中で、非常に考えさせられることの多いものでした。

○阿部大輔さん(東京大学都市持続再生研究センター)
一度は熱海まで行ってしまわれましたが、二回目で何とかたどり着いてくれました。講義して頂いたのは、バルセロナの近代化と現代化について、セルダの話、旧市街の再生の話、ウォーターフロント開発の話など、盛りだくさんで、バルセロナという都市の持つ豊富な魅力に改めて、うーむ、と感じ入ってしまった次第です。大変刺激の多いレクチャーでした。

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11月 29th, 2010

まちづくり論(2010年度春学期)レポート講評

大変遅れてしまいましたが、2010年度春学期の「まちづくり論」のレポートの講評です。

■レポート課題

「都市計画」と「まちづくり」の関係に着目しながら、ある特定の都市、まち、地域、界隈の「都市計画」及び「まちづくり」の成果について、自分なりに評価を加えよ。

※なお、「都市計画」と「まちづくり」の定義については、本授業を参考としつつ、レポート内に各自で明確に示すこと。
※対象として取り上げた都市、まち、地域、界隈の名前を明記すること。
※地図や写真、スケッチ等を積極的に使用すること。

分量:文字数2000字~4000字/A4・4枚以内

■全体講評

 課題を普通に読めば、最低限、「都市計画」と「まちづくり」について定義を行い、かつ両者の関係に着目しながら考察を進める必要がある、ということは理解されるはずですが・・・残念ながらそうした課題にしっかり答えているレポートは全体の2割程度でした(つまり、今回はレポート課題にしっかり答えてさえいれば、Aとなったわけです)。 また、よく見られたのが、「都市計画」や「まちづくり」を定義せず(あるいは定義はしたがその定義と関係なく)、例えば、行政が出したパンフレットやウェブページの「○○のまちづくり」とか「○○計画」といったタイトルだけで、それを「都市計画」である、「まちづくり」であると判断し、その内容について、そうしたパンフレットやウェブページからの抜粋を紹介する、といったものでした。
  これは「まちづくり論」全体を通したポイントですが、「都市計画」や「まちづくり」、そしてその両者の関係についてしっかりと概念規定を行うことで、この都市、この地域をかたちづくる、あるいは守り育てる「仕組み」を構造的に把握することができる、ということが重要なのです。今、世の中では、「○○のまちづくり」や「○○計画」が溢れていますが、それらはそれほど深い意味でそう名付けられているわけではありません。自分の頭で、自分の見方で、そうした様々な「○○のまちづくり」や「○○計画」の本質、性格を評価しなくてはいけません。
 言葉をしっかりと定義する、また例えば「都市計画」や「まちづくり」の関係性を考察する、というのは、この世界の見方、切り取り方、つまりフレームワークを設定するということです。それが唯一正しいフレームワークというわけではないわけですが、こうした何らかのフレームワークを設定しないと、いつまでたってもこの世界を正確に認識することはできないでしょう・・・。レポートは論文の一種です。論文とは、自分なりに設定したあるフレームワークのもとで、物事を分析したり、評価したり、提案したりするものです。

■優秀レポート
(著者の承諾を得たものは、公開いたします)

以下の二編は、「都市計画」と「まちづくり」を自分なりに解釈し、その関係についてしかっりとした考察を加えています。その優れた筆致も含めて、強く印象に残ったものです。

●清水信宏
「荻窪駅北口をめぐる「都市計画」と「まちづくり」の評価、そこから見えてくること」

【講評】私自身が荻窪北口の駅前の焼き鳥屋の光景に愛着を覚えていた、という事実は抜きにしても、このレポートが設定した「人々の心象風景やノスタルジーに訴えかける何かは「都市計画」と共存しうるのか」という問いかけは魅力的である。「まちづくり」による地域のコミュニティの醸成、そのプロセスは、そこで生きる人たちの「生き方」と繋がる、そしてその「生き方」の構築の延長線上において初めて、「都市計画」との有効的かつ友好的な握手がありえる、という考察は、なるほどと思わせるが、やや寛容に過ぎるというか、甘い話ではある。実際には、都市の中で、次々と大切な心象風景が失われ続けている。もう少し強い論理の構築が必要なはすだ。なお、最後に、自らの立場(アカデミックな場所にいる人々)で何ができるのか、について考察を加えている点も、評価したい。当事者であろうとする姿勢、意識が、レポートを引き締めている。

●亀元啓道
「ベルリン/ミッテ地区」

【講評】一つの詩のような、あるいはまさにベルリンの地下のクラブで流れている、強くしなやかな、心地よい反復を繰り返す低音のグル―ヴが紙面の裏から聴こえてくるような、そんなレポートである(言い過ぎか)。「都市計画」と「まちづくり」は相反するものではないとして、目標と目的を持った「都市計画」と、予想できない、自然発生的な「まちづくり」の両者の並立が必要であるとする。「都市計画」は「常に何かが欠けている」存在だからこそ、「まちづくり」の契機を孕んでいる、という理解は、正しい。まちをつくるとは、確かにそうしたプロセスだ。ただし、両者の関係は時とともに、変化していってしまう。自然発生的であったものを人々がプロセスとして、モデルとして意識した瞬間に、それは自然ではなくなっていってしまうことが多々ある。さぁ、どうしようか。

以下の二編は、内容については物足りなさが残るものの、まちの変化や歴史に着目し、自分なりにしっかりと評価を試みている姿勢に好感を持ったレポートです。

●遠上春香
「湘南台 今と昔」
【講評】写真を用い、実際のまちの具体の変化に基づいて立論している点が特徴である。湘南台では、学生をターゲットにしたまちづくりが進んだ一方で、高齢者の方などにとってはあまり住みやすいまちになっていないこと、街並みが明るく統一感のあるものへと磨かれ、車道が広くなり交通が便利になった一方で、よく育っていた街路樹がなくなってしまったことなどを指摘しているが、様々な人の立場からまちを見て、様々な価値同士の相克を捉えながら、それらを調整し、まちのありかたを構想していくことは、都市計画やまちづくりの基本である。SFCに通う今後の3年間、こうした視点から湘南台のまちに注目し続けて欲しいし、もし、やる気があれば、ぜひ、自らまちづくりのひとつの主体となって活動してみて欲しい。

●藤野祥佑
「新宿区歌舞伎町のまちづくり」
【講評】歌舞伎町のまちの成り立ちから、現在の「歌舞伎町ルネサンス」までを視野に入れ、民間と行政という主体に着目しながら、歌舞伎町のありように自分なりの評価を加えている点が良い。これまでの経緯の中で、「「まちづくり」が「都市計画」に負けた」歌舞伎町では、現在も「行政主導」が目につき、「民間」の姿が見えないと書く。しかし、ここでいう「民間」とは一体誰のことだろうか?土地所有者、商業者たち、国内外の資本、来訪者…様々な人々が歌舞伎町に関わっている。そうした状況において、「まちづくり」の主体はどのようにあるべきか、もう一つ、考察を深めて欲しいところである。
以上です。

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7月 18th, 2010

環境デザイン・フィールド・ワークショップ2010履修者募集中!

政策メディア研究科のプロジェクト科目「環境デザイン・フィールド・ワークショップ」は、今年度、以下の要領で開講します。

トルコ都市・集落巡礼

「都市や集落の風景を語るのに、トルコほど豊かな材料を提供してくれる国も少ないだろう。古い歴史を誇り、地形や気候が変化に富み、民族的にも多様なこの国土には、色々な生活の様相が見られる。」(陣内秀信、1990)

古代ギリシャ・ローマ時代以来、常に地中海地域の一つの中心であり続けている、「都市の中の都市・イスタンブール」、トルコ伝統の街並みが今も谷合いの斜面上に広がる「世界遺産小都市・サフランブル」、そして地殻変動が生み出した奇岩に寄り添う「カッパドキアの集落・遺跡群」を中心に、トルコの都市・集落を巡り、環境と人間との関わり、気候や地形といった自然基盤と人間の生み出す都市空間・都市文化の時間的な重層性、有機的な関係性を体感し、知見を広める。

研修日程:2010年9月9日~9月19日

研修先:イスタンブール、サフランボル、カッパドキア、アンカラ等

説明会:2010年7月19日、7月20日 何れも昼12時40分~ ε11教室にて
 追加説明会開催! 2010年7月22日 12時~ τ11教室
             2010年7月27日 11時~、12時40分~ ε12教室

ポスター https://urbanics.sakura.ne.jp/goingurbanics/wp-content/uploads/2010/07/fieldworkshop2010.pdf

※学部生は自由科目としての履修になりますが、参加を歓迎いたします。
※第一次申し込みの期日は7月24日になります。説明会に参加できない人で、本授業に興味関心のある人は中島まで個別に連絡を下さい。

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1月 4th, 2010

Website開設しました。

 

 Planning & Urbanism

都市を通じて表現される人類の味が

大らかでなつかしい 

2010年4月開設の慶応義塾大学・中島直人研究室のwebsiteです。

中島直人の個人websiteはこちらにもあります。

どうぞ、よろしくお願い致します。














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