成熟社会 都市ストックの再編
2月 8th, 2012

伊東での研究会合宿

2月4日から5日にかけて、研究会B(1)のメンバーたちと、伊東にて合宿形式の最終発表会を行いました。伊東はSFCのある藤沢市から2時間弱で行ける温泉のまちです。

最終発表は、
●卒業プロジェクト(一ノ関:アニメと関係する聖地巡礼型観光まちづくり、佐藤:裏銀座のテナント構成と屋上利用、辻:屋上農園によるサードコミュニティ形成、眞保:郊外型大学キャンパスの現状と可能性(八王子市))
●グループ研究(富士吉田プロジェクト、都市計画遺産(藤沢防災建築街区)プロジェクト、裏銀座プロジェクト)
●個人研究(カルガリーの都市計画、「湘南台」の歴史的文脈)
と盛りだくさんでした。

発表会の最後には、研究に夢中になること、お互いに厳しく切磋琢磨することでで見えてくる研究の楽しさなど、真面目に意見交換しました。で、その後は・・・・伊東の銭湯(全て源泉かけ流し)で温泉を満喫したあと、打ち上げ飲み会へ。そして、翌日も伊東市内をまちあるきし、伊東の海産物を存分に味わってから、解散しました。

とりあえず今学期、お疲れ様でした(まだ、プロジェクトの報告書のまとめや発表が続きますが・・・)。

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1月 20th, 2012

【書評】和辻哲郎『風土』 その2

 本書は、著者和辻哲郎が海外を旅した際の実感と、その旅先でハイデッガーの「時間と存在」という本に出会ったことを契機として「風土論」という新しい概念を考察したものである。主にアジア地域を「モンスーン」、アラビア・アフリカ・モロッコなどの乾燥地帯を「砂漠」、ヨーロッパ地域を「牧場」と定義付け、これらの3つの類型を主軸とし、それぞれの風土における人間の性質、芸術や宗教の志向などを論じている。それぞれの土地に存する「風土」は、気候や食物の恵みなどの既にそこに存在した「自然」と、その自然と共に生きる「人間」との間柄を認識する方法であり、「自然」と「人間」は独立した個体同士だという概念を否定するものである。人間は自然と対峙・共存してこそ今の「人間」の在り方が成り立っており、この関係性の中での対峙・共存の仕方、知覚・認知の仕方がその土地固有の「風土」である、ということである。

 本書の中での和辻の主張は、後続の学者によって多々批判されている個所もあるようであるが、大枠として正しく、70年前に書かれた書物であるからと言って現代に応用できないなどということは決してない。そもそも地理的な関係で必然的に生まれてきた気象や自然というものがあり、その中で人間(この場合、人類という動物的な単語で示すのではなく、人格を持った個人という意味で「人間」という表現を用いることを強調しておきたい)が生活を営み始めたことは、人間生活の根源に存在するすり替えられない事実であり、その土地固有の自然と協調して、人間は歴史を営んできて、その結果としての現在がある。どんなに時代が変わっても、その「風土」によって育まれた「人間」の、極めて根本的な特性の部分は、古くからの風土によって現代でも規定することが可能だと考える。

 このことは、考えてみれば当たり前で、気象や自然との対話の中で私達は無意識的に均衡を図りながら生活しているのだが、そのことをあえて言語で論じ、体系化して見せたという点で、和辻の取り組みは大変面白いものであったと言える。個人的にはこの本を通じて、改めて人間とその周りの環境との間柄と、その付き合い方が形成する人格や文化について、考えることができたことがとても新鮮であった。

 この議論に対して後続の学者から異論は多々あることは先に述べたが、和辻の議論に明確な根拠がなく、論理性が疑わしいということよりも、こういった視点を改めて認識し、またその視点を活用して人間を論じたという点に和辻の功績は存在する。都市に対して興味を持ち、研究対象としていく私達は、本書の和辻の主張からその「視点」をくみ取り、実際研究に当てはめ、「風土」という観点からも都市を見てみる事が出来るか否か、そこが大切であるのではないかと感じた。

和辻哲郎『風土 人間学的考察』岩波文庫、1979年 (※原著は1935年)
文責:大沼芙実子 (総合政策学部3年)

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1月 20th, 2012

【書評】藤井聡・谷口綾子『モビリティ・マネジメント入門』

 本書は、1990年代後半からヨーロッパやオーストラリア、そして日本で始められ、発展してきた、「コミュニケーション」を重視する新しい交通政策の考え方―「モビリティ・マネジメント(=MM)」―の概要と各事例を、大きく海外・国内に分けて紹介したものである。

 本書では、地域モビリティの衰退や渋滞等のさまざまな交通問題を、単なる技術やシステムの問題ではなく、「人間」が引き起こした社会的な問題と捉えている。そのうえで、コミュニケーション施策などの「ソフト」施策と、交通システムの運用改善や整備などの「ハード」施策を適切に組み合わせながら、当該の地域や交通を、「過度に自動車に頼る状態」から、「公共交通や徒歩などを含めた多様な交通手段を適度に(=かしこく)利用する状態」へと変えていく一連の取り組みを、モビリティ・マネジメントと定義している。

 モビリティ・マネジメントの中心であるコミュニケーション施策の一般的な流れは、次の通りである。

①  MM実施者から、一人ひとりに接触を図り、参加者から情報を提供してもらう。

②  MM実施者の方で、得られた情報を踏まえて、提供する情報・メッセ―ジを改めて加工する。

③  MM実施者から、加工した情報、メッセージを提供(フィードバック)する。

 以上はあくまでも一般的な例であって、実施規模や土地条件によって施策は変わるが、対象となる一人ひとりに、個別的、かつ、大規模にコミュニケーションをとることが、MMにおけるコミュニケーション施策の特徴である。

 本書の、「モビリゼージョンが進行したのは、交通事業者がモビリゼーションに対抗する有効な処置を取れなかったからである」という指摘はとても興味深く、交通事業者が顧客主義のもと、ホスピタリティーを持って利用者と真摯に向かい合うことが必要だと感じた。環境への配慮から公共交通機関の存在感が増している昨今において、モビリティ・マネジメントという考え方は、さらにその流れを加速させる契機になるのではないか。

藤井聡・谷口綾子『モビリティ・マネジメント入門―「人と社会を中心に捉えた新しい交通戦略」』、学芸出版社、2008年
文責:湯浅資(総合政策学部1年)

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1月 20th, 2012

【書評】和辻哲郎『風土』 その1

 その土地の風土はその土地の人間に深く関係する事を改めて学んだ。従って、風土は単に、人間から独立した自然ではなく、人間の有り方であるという事が分かる。本書では、大まかに風土を分けて考察しているが、自然は決して普遍的ではなく、無常であって、唯一無二である。なので、風土による歴史的人間の構造は変わる事のない事実ではあるが、その人間は風土と共に発展するのである。

 その事を本書から学んだ上で、日本の各地方、或はそれぞれのまちにおいても当然風土は細かいところで特性は違い、人間の構造も詳細において特性を変えるのだと考える。だからこそ、まちの構造も、それぞれの風土、即ちそれぞれの風土的人間によって、構造を最適化していかなければならない。まちづくりにおいて、その土地の人間に着目する事はとても重要な調査であるが、それは同時に風土的人間考察も必要である事を表す。それは歴史的・社会的現実であり、捨て去る事のできない人間の本質を見極める上で重要であり、そうした上でのまちづくりは、持続可能なまちを創出するきっかけとなる。

 また、私が本書から発展して考えた事は、世界がボーダーレス化していく中で、各人間は風土的人間という本質を持ちながらも、様々な「ところ」を移動する過程で、風土的人間において発展を多く繰り返す事になる。この過程を繰り返す人間が増えている事は間違いない。従って、各風土においても、純粋な風土的人間の存在が少なくなるのではないかと考える。その代表的な例はアメリカだ。アメリカ大陸においては、多民族国家であるが故に、アメリカの風土がそれぞれの風土的歴史を持つ人間をどの様に発展させていくのか、という疑問にも繋がった。この疑問は、今後『風土』を読み深める意味でも、風土を更に理解していく上でも、考え続けていきたいと思う。

和辻哲郎『風土 人間学的考察』岩波文庫、1979年 (※原著は1935年)
文責:宮地智也 (総合政策学部3年)

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12月 31st, 2011

都市遺産班 藤沢防災建築街区パンフレット作成

都市遺産班パンフレット

研究会の3年生4人(石川亮平、河本雄介、河野和彦、宮下貴裕)は先学期から共同で藤沢駅南口の、はぜのき広場を中心に名店ビル、ダイヤモンドビル、C-Dビルの3つのビルからなる通称「391街区」の研究を進めていますが、先のORFに合わせて、簡単なパンフレットを作成しました。
彼らの研究の基本コンセプトは「都市計画遺産」ないし「都市遺産」。非戦災都市である藤沢では、昭和30年代後半から昭和40年代前半にかけて、全国に先駆けて、都市改造事業として、駅前広場の創出を大きな目的とした駅南口一帯の土地区画整理事業が実施されますが、その際、防災建築街区が合わせて指定され、その一部である391街区では、その基本計画で採用された中庭型街区という意欲的な空間像がそのまま実現しています。ビル、街区の空間構成の特徴とともに、その都市的な意味を都市計画史や現代都市史の視点から解き明かし、今後の継承や再生に向けた提案をしていきたいと考えています。

藤沢防災建築街区基本計画(1962)/藤沢市役所所蔵・中島撮影

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12月 19th, 2011

『建築雑誌』に掲載 研究会で読んだ本の抄録

中島研究会では、昨年、ニューアーバニズムの入門書として、『New Urbanism Best Practice Guide』という本を輪読しました。その成果は、日本建築学会の学会誌『建築雑誌』2010年11月号に掲載された文献抄録にまとめました。また、先学期、研究会の学部2年生、渡邊美香さんが取り組んだ『Ecological Urbanism』については、同じく『建築雑誌』の2011年12月号に文献抄録というかたちで掲載されました。英語を読むだけで何か疲れてしまった感もなきにしもあらずですが、ともにオムニバス的、俯瞰的な書物で勉強になりました。前者はCiNii経由ですでに公開されております。後者も1年経過すれば見られるようになるようです。
さて、この研究室のブログに、これから研究会メンバー(主に学部の2~4年生)たちによる、都市計画関係の本の簡単な書評を載せていくことにします。研究会ではフィールドワークなくして都市計画やまちの研究なし、といつも言っているのですが、一方で、常日頃から書物には親しむように、とも。

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11月 22nd, 2011

富士吉田プロジェクトの中間報告

富士吉田商工会議所と富士吉田市からの依頼を受けて、今年度から中島研究会で取り組んでいる富士吉田における富士山駅を起点とした富士信仰を活かした観光施策に関する調査の中間報告会が、2011年11月21日に開催されました。今回は、食と農に関する調査を担当する玉村先生の研究会と合同での発表でした。中島研は、学部3年の赤松、海野、学部2年の渡邊、朝香、学部1年の湯浅の5名が分担して、「歩く上吉田プロジェクト」について説明しました。富士山に向かって1キロ続く富士道を、いかに飽きさせずに楽しく歩けるようにするのか、が課題で、たつ道のオープン化や御旅所ひろばなどを提案しました。これらを本当に実現可能なプロジェクトにしていくためには、これから地域のさまざまな方々と丁寧に丁寧につめて検討していかなければならないことが沢山あります。改めて、頑張らねば、と思いを強くした次第です。また、玉村研のプラットフォーム構築を目指した現代富士講の提案は、非常に説得力があり、中島研も大いに参考に、そしてそのプラットフォームにのせられるものはのせていきたいと思います。

中間報告における全体構想案

帰り道の富士山。

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8月 11th, 2011

研究会B(1)アーバニズム(場所、風景、都市)【2011年夏学期まとめ3】

8月4日から5日まで、河口湖・富士吉田にて、最終発表合宿を行いました。
まずは、最終発表会後の集合写真をアップしておきます。

さて、肝心の研究会の最終発表ですが、発表タイトルは以下のとおりでした。

■共同研究

「GINZA PROJECT」(「裏銀座」の研究と提案)
銀座チーム:一ノ関圭斗4・佐藤あすか4・辻尚宏4・武藤尚也3・乗常航人2

「松×太平台」(辻堂太平台地区におけるクロマツ景観の分析とその保全)
風致地区チーム:横田成美4・赤松智志3・海野沙弥佳3

「391街区の保全的再生に向けた研究」
都市計画遺産チーム:小川修平4・石川亮平3・河野和彦3・河本雄介3・宮下貴裕3

■個人研究

「大学キャンパスと都市形成 八王子市の郊外型キャンパスを起点としたまち形成の可能性」
眞保梨花子4

「都市の変容とコミュニティ形成」(多摩市馬引沢地区を事例として)
大沼芙実子3

「中国における都市開発の変遷と胡同保全の事例研究」
徳永周平3

「ECOLOGICAL URBANISMとは何か?」
渡邊美香2

何れも、普段の研究会での発表とは見違えるようによくなっていて、充実しておりました。
近いうちに、レジュメをアップしたいと思います。

合宿二日目は、今年から研究会メンバーの何人かで取り組む予定の富士吉田市の中心部、特に上吉田の御師集落から浅間神社、富士山登山道等を、富士吉田市の方、観光ボランティアガイドの方のご案内で見てまわりました。富士山信仰という文化の厚みを感じた一日になりました。もう一枚、集合写真をアップしておきます。

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8月 4th, 2011

デザインスタジオ「391街区の再生」【2011年夏学期まとめ2】

池田靖史先生、登坂誠先生(日建設計)とともに担当する学部スタジオ「都市と建築」では、今学期は藤沢駅前の一角の通称「391街区」の再生をテーマとしました。391街区は、1960年代に完成した防災建築街区であり、藤沢名店ビル、ダイヤモンドビル、C-Dビルという3つのビルとそれらが取り囲む中庭(はぜのき広場)から成っており、研究会B(1)でもその保全的再生に関する研究を進めています。スタジオでは、駅前の公共性の再考(特に、3.11以降の)も念頭に置き、藤沢駅前の再生の起爆剤となるような街区のありかたを求めて、自由に計画、設計してもらいました。
8月3日の夕方には、3つのビルのオーナーさんたちにご協力を頂き、オーナーさんたちの前で学生が自分の作品をプレゼンテーションするという、大変貴重な成果発表会を行うことができました。オーナーさんたちからは、一方で実現可能性の検討、一方で若者らしい大胆さの追求という、両者を的確にご指摘いただきました。一週間前の学内最終ジュリーでは、図面等未完成のものも多く、プレゼンもたどたどしく、正直、オーナーさんの前での発表、やめた方がよいのでは・・・・とも思いましたがが、一週間後、ふたをあけてみれば、皆、立派なパネルと模型、そしてプレゼンテーションを行ってくれました。改めて、学生たちの潜在能力の高さと、教育の場としてこうした社会との接点を用意することの重要性を思ったわけです。
ご協力いただきました、各ビルの皆様、どうも有難うございました。

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4月 25th, 2011

大宮まちづくりコンペ

この4月から新たに3年生になる学部生4名がチームを組み、都市計画学会主催の学生提案競技に参加しました。皆、初めての経験で、スキルも未熟で、提案をまとめるのに苦労していたようですが、何とかA1パネル2枚を作成しました。中山道の宿場町の都市構造をどう活かすか、氷川神社の存在をどう活かすか、といったところが中心のテーマとなりました。まぁ、ここが出発点、これから頑張っていきましょう。

作成したパネル

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