SFCのEG(環境デザイン・ガバナンス)の教員、学生を中心として、2011年3月11日の東日本大震災以降の様々な社会状況に対応した支援活動、研究活動を展開する「SFC3.11プロジェクト」が立ち上がり、活動を始めています。その一環として、気仙沼出身の学生の強いイニシアティブのもと、気仙沼市の復興を支援する研究会横断型の「気仙沼復興プロジェクト」が早速動いており、中島や研究会のメンバーの何人かも参加しています。4月中旬には、気仙沼を中心として、陸前高田、大船渡方面を訪れ、被災状況を自分たちの眼で確認してきました。脱成長時代における未曾有の大規模災害からの復興…何をすべきか、私たちにも分からないことばかりですが、とにかく走りながら様々なことを謙虚に学びつつ、何とか被災された方々、地域の生活の再建、産業の恢復、都市の復興のお役に立ちたいと考えています。
三陸海岸都市の都市計画・復興計画史アーカイブ
このたびの巨大地震・津波によって被災され、貴重な生命を失われた数多くの方々に心よりお悔やみを申し上げます。また、避難地で大変厳しい日々を過ごされている方々に心よりお見舞いを申し上げます。
都市計画史を研究する仲間たちと、「三陸海岸都市の都市計画・復興計画史アーカイブ」を立ち上げました。
三陸海岸都市の都市計画・復興計画史アーカイブ
http://www45.atwiki.jp/sanrikuplanning/
今回の震災からの復興において、これまでの復興計画の歴史から何を学ぶことができるか。
いかに甚大な被害を受けようとも決して消え去ることのない都市や地域の文脈に耳を傾ける。
二つの研究会のまとめ
今学期もあっという間に終わり、もう2月になってしまいました。
二つの研究会も、それぞれ今学期のまとめ(最終発表)を行いました。
■研究会B(1) アーバニズムとプレイス
こちらの研究会では、都市デザイン、都市計画、まちづくりに関して、研究会としての研究テーマ、ないし各自それぞれの研究テーマを立てて、チームで、あるいは個人で進めてきました。1月31日の午後、その最終発表会を行いました。
今学期の研究内容は…
1 藤沢市太平台風致地区におけるクロマツ景観の分析とその保全のための提案
藤沢市の辻堂地域にある太平台風致地区は、かつては松の樹林におおわれた砂丘でしたが、戦後、住宅地開発が進み、今ではすっかり住宅地となりました。昭和30年代の風致地区指定も、宅地開発に伴い、減少が予想されたクロマツの保護が目的でした。学部3年生1名と2年生2名のチームで、1)風致地区指定の経緯、2)現在のクロマツの分布とその景観的特徴、3)1960年代以降の敷地の細分化の経緯とクロマツの残存状況との関係、4)地域における近年のクロマツ保護の活動、等について調査し、クロマツ景観を保全していくための方法について、考察を行いました。
2 藤沢総合都市計画の現代的意義に関する研究
藤沢の戦後の都市形成の基盤となったといわれ、全国的にも最初期の総合的な都市計画として言及されることのある藤沢総合都市計画(1957年制定)。今学期は主に学部2年生3名が中心となり、都市計画のイロハを学びつつ、この藤沢総合都市計画が藤沢の都市形成に果たした役割、その現代的な意義について、1)藤沢の市制以降の歩みと藤沢総合都市計画の目標との関係の解明、2)施設整備と市街化制御の両側面からの達成度の評価と空間実態の把握、3)これまでの市民満足度調査等の結果に基づいた市民からの総合都市計画への評価を通じて、考察を行いました。
3 銀座における通り、界隈ごとの景観特性に関する基礎的調査
銀座デザインルールには、銀座の界隈ごと、通りごとの特徴を踏まえることがうたわれていますが、各界隈や通りの景観特性についてはおおざっぱにしか記述されておらず、内容が不足しています。そこで、今学期は、学部3年生3名で、まずは銀座を構成する全ての通りを踏査し、それぞれの街路の景観的特徴をカルテにまとめる作業を行いました。銀座はなかなか手ごわく、まだまだ景観特性はつかめていない段階ですが、今後、しっかりと進めていく予定です。
4 湘南映画祭の可能性 〜地域ブランディングとまちづくりの複合型地域カルチャーイベントとして~
映像関係に関心があり、その方面に就職予定の湘南育ち、鎌倉在住の学部4年生が卒業プロジェクトとして進めた研究です。内容としては、実証的というよりは、提案的なもので、国内の映画祭の課題や要件等を文献や独自のアンケート調査から明らかにしたうえで、藤沢市全域を対象とした湘南映画祭の開催を、複合型地域カルチャーイベントという独自の枠組みのもとで思い切って提案しました。
5 桃園川緑道における実質的緑量と心理的緑量の関係に関する研究
これも卒業プロジェクトとして進めた研究で、杉並区の桃園川緑道を対象として、写真評価アンケートという手法を用いて、緑視率と心理的緑量、歩きたくなる意欲との間の関係について、分析しました。ただ緑が多ければそれでいいというわけではない、という問題意識のもと、緑がどうあれば緑豊かに感じられ、そしてそこを歩きたくなるのか、というなかなかはっきりとは解き難い問題に対して、正面から取り組んでみました。
6 郊外型大学キャンパスが都市形成に与えた影響に関する研究
大学キャンパスの都心回帰が続く中、郊外型大学キャンパスの評判はあまりよくありません。しかし、こうした郊外型大学キャンパスも実際には周囲の都市形成に様々に関係し、寄与していきたのではないか、という問題意識のもと、八王子市を題材にして、郊外型大学キャンパスと地域との関係を、ソフトとハードの両方から把握しようと作業を開始したところです。学部3年生の個人研究プロジェクトです。
7 地域主導の渋谷川再生を念頭に置いた河川再生事例研究
コンクリート三面ばりの渋谷川を再生させるためには、どのような行動を起こせばいいのか、を考えるために、他地域で参考になりそうな試みからヒントを得ようという研究です。今学期は三島市の街なかがせせらぎ事業に着目し、源兵衛川を中心として現地を見学し、担当者やNPO三島グランドワークの方々にヒアリングを行い、その内容をまとめました。学部3年生の個人研究プロジェクトです。
8 伝統的町並み地区における文化体験型宿泊施設の実態と可能性
こちらは研究会には所属せず、独自に卒業プロジェクトを進めた学生の成果になります。歴史的な町並みが今でも残るが、人口が減り、空き家が増加しているような地域の再生に寄与するような、交流人口の増加およびその質的高まりを目指す「文化体験型」の宿泊施設に着目し、その実態を調査しました。特にケーススタディとして福山市鞆町の「御舟宿いろは」をとりあげ、オーナーの方にご協力を頂き、滞在調査、アンケート調査を行いました。
以上です、何れの研究も(卒業プロジェクトも含む)端緒についたばかりで、まだまだこれから、という感じではありましたが、それでも報告内容はなかなか興味深く、これからが期待されます。
■研究会B(2) まちづくりの現場を支援する
もう一つの研究会では、奥浅草の聖天町を対象として、そこでの素材型地場産業である「皮革」を活かしたまちづくりの方策について検討し、昨年12月には実験的なワークショップを開催しました。1月16日の午後、浅草聖天町振興会の会合にて、ワークショップの結果と今後の活動について地元の方々の前で報告し、意見交換を行いました。地元の方が何を望み、われわれはそれに対し来年度以降、どのようなかたちで支援できるのか、いろいろと課題や手掛かりが見えた会となりました。また、来年度は、聖天町を含む浅草観音うらおよびその周辺一帯の観光まちづくりを進めるために昨年、設立された奥浅草観光まちづくり協会の取り組みに積極的に深く関わりながら、奥浅草のまちの魅力を顕在化させ、賑わいを生みだす活動を展開していきたいと考えており、早速、学生たちは協会の理事さんとの打ち合わせを開始しています。地元の期待にこたえられるよう、頑張りたいと思います。
2010年、ゲストレクチャー御礼
本年秋学期は、大学院の「都市デザイン論」、「環境の変遷」という二つの講義もの、「応用環境デザイン」というスタジオ(とはいえ、なかなか変わった形式で、結局、個別にエスキスを展開中)、学部の二つの研究会、そして「都市と地域の未来」という本来は講義ものの授業を大幅に変更した都市スタジオ入門を担当しています。ということで、明らかに私のキャパシティを凌駕しているように思われるわけですが、学生に少しでも幅広い多様な知見を得てもらおうという趣旨で、各授業、様々な方にゲストレクチャーをお願いすることができ、年内に関しては、何とか担当の任を果たしました。この秋学期に、大変遠いところSFCまでお越し頂いたのは、下記の先生方です。改めて、心より御礼申し上げます。
研究会B(1) Urbanism & Places(学部)
○岡村祐さん(首都大学東京都市環境学部)
景観研究のイロハから、実はSFCのすぐお隣、茅ヶ崎市での景観まちづくり活動まで、ご自身の幅広い活動を大変分かりやすく講義して頂きました。特に岡村先生監修の秀逸な景観まちづくりマップは、参考になりました。湘南台、藤沢でもこうした活動を進めたいものです。
○野上陽子さん(株式会社日本設計都市計画群)
民間組織設計事務所での都市開発プロジェクトに関わる仕事についてご紹介頂いたのに加え、SFCのOGということで、社会に出てから感じたSFC生の強みについても、語って頂きました。皆、勇気づけられたのでは?
都市と地域の未来(学部・修士)
○三牧浩也さん(柏の葉アーバンデザインセンター)
故北沢猛先生の最も大きな遺産の一つである柏の葉アーバンデザインセンター(UDCK)をマネジメントしている三牧さんに、UDCKでの様々な取り組みについて、ご説明を頂きました。スタジオで皆が考えていることよりも、UDCKが実践していることの方が自由で楽しそうだという…最後、誰のために活動しているのか、「行政のためでも市民のためでもない、『都市』のための仕事は成り立つか」という問いかけは、とても新鮮でした。
都市デザイン論(大学院)
○関谷進吾さん(東京大学大学院新領域創成科学研究科)
SFC出身の若き研究者ということで、今、まさに博士論文として仕上げようとしている「アーバンデザインセンター論」について、お話を頂きました。アメリカ、欧州を中心に、各国のアーバンデザインセンターを、ふんだんにビジュアルを駆使して紹介してくれました。早いうちに海外に出て多様な文化に積極的に触れること、の重要性をご自身の経験に基づいて、アドバイスしてくれました。
○鵜飼修さん(滋賀県立大学環境科学部)
コミュニティアーキテクトとは何か、というテーマで、鵜飼先生自身の歩みと、現在担当されている近江環人講座の取り組みについて、講義を頂きました。予想したとおり、「コミュニティアーキテクト」という職能をめぐって、大学院生たちとの活発な議論も展開して下さいました。
環境の変遷(大学院)
○松原康介さん(筑波大学大学院システム情報工学研究科)
SFC出身で、都市計画史・都市保全計画分野の研究者として国際的にも大活躍されている松原先生に、フェスという伝統都市の姿、そしてその近代化、現代化についての講義を頂きました。本を読ませてもらっておりましたが、やはり直接お伺いするのが一番分かりやすく、頭にも残ります。さて、SFCの大学院生の中から、松原先生に続く人をどう輩出するのか、それはやりがいのある仕事の一つです。
○川本智史さん(東京大学大学院工学系研究科)
9月の環境デザイン・フィールド・ワークショップでイスタンブールにて大変お世話になったのに続いて、図々しくも講義まで頼んでしまいました。イスタンブールの長い長い都市の歴史を70分ほどの短い時間でお話して頂きました。イスタンブールの近代、そして現代は、日本のそれとの比較の中で、非常に考えさせられることの多いものでした。
○阿部大輔さん(東京大学都市持続再生研究センター)
一度は熱海まで行ってしまわれましたが、二回目で何とかたどり着いてくれました。講義して頂いたのは、バルセロナの近代化と現代化について、セルダの話、旧市街の再生の話、ウォーターフロント開発の話など、盛りだくさんで、バルセロナという都市の持つ豊富な魅力に改めて、うーむ、と感じ入ってしまった次第です。大変刺激の多いレクチャーでした。
12月20日奥浅草「皮革×オムマキ」ワークショップ
12月20日の月曜日の午後3時から、奥浅草千束通り商店街にある名店「デンキヤホール」さんにて、「皮革×オムマキ」ワークショップを開催します。
詳しくは下記、チラシをご覧ください。
hikakuomumaki
奥浅草のまちづくり資源発掘を目的とした、奥浅草が誇る食と素材のコラボレーションです。
ご関心のある方、是非、足をお運びください。
以下、ワークショップの準備風景です。
まちづくり論(2010年度春学期)レポート講評
大変遅れてしまいましたが、2010年度春学期の「まちづくり論」のレポートの講評です。
■レポート課題
「都市計画」と「まちづくり」の関係に着目しながら、ある特定の都市、まち、地域、界隈の「都市計画」及び「まちづくり」の成果について、自分なりに評価を加えよ。
※なお、「都市計画」と「まちづくり」の定義については、本授業を参考としつつ、レポート内に各自で明確に示すこと。
※対象として取り上げた都市、まち、地域、界隈の名前を明記すること。
※地図や写真、スケッチ等を積極的に使用すること。
分量:文字数2000字~4000字/A4・4枚以内
■全体講評
課題を普通に読めば、最低限、「都市計画」と「まちづくり」について定義を行い、かつ両者の関係に着目しながら考察を進める必要がある、ということは理解されるはずですが・・・残念ながらそうした課題にしっかり答えているレポートは全体の2割程度でした(つまり、今回はレポート課題にしっかり答えてさえいれば、Aとなったわけです)。 また、よく見られたのが、「都市計画」や「まちづくり」を定義せず(あるいは定義はしたがその定義と関係なく)、例えば、行政が出したパンフレットやウェブページの「○○のまちづくり」とか「○○計画」といったタイトルだけで、それを「都市計画」である、「まちづくり」であると判断し、その内容について、そうしたパンフレットやウェブページからの抜粋を紹介する、といったものでした。
これは「まちづくり論」全体を通したポイントですが、「都市計画」や「まちづくり」、そしてその両者の関係についてしっかりと概念規定を行うことで、この都市、この地域をかたちづくる、あるいは守り育てる「仕組み」を構造的に把握することができる、ということが重要なのです。今、世の中では、「○○のまちづくり」や「○○計画」が溢れていますが、それらはそれほど深い意味でそう名付けられているわけではありません。自分の頭で、自分の見方で、そうした様々な「○○のまちづくり」や「○○計画」の本質、性格を評価しなくてはいけません。
言葉をしっかりと定義する、また例えば「都市計画」や「まちづくり」の関係性を考察する、というのは、この世界の見方、切り取り方、つまりフレームワークを設定するということです。それが唯一正しいフレームワークというわけではないわけですが、こうした何らかのフレームワークを設定しないと、いつまでたってもこの世界を正確に認識することはできないでしょう・・・。レポートは論文の一種です。論文とは、自分なりに設定したあるフレームワークのもとで、物事を分析したり、評価したり、提案したりするものです。
■優秀レポート
(著者の承諾を得たものは、公開いたします)
以下の二編は、「都市計画」と「まちづくり」を自分なりに解釈し、その関係についてしかっりとした考察を加えています。その優れた筆致も含めて、強く印象に残ったものです。
●清水信宏
「荻窪駅北口をめぐる「都市計画」と「まちづくり」の評価、そこから見えてくること」
【講評】私自身が荻窪北口の駅前の焼き鳥屋の光景に愛着を覚えていた、という事実は抜きにしても、このレポートが設定した「人々の心象風景やノスタルジーに訴えかける何かは「都市計画」と共存しうるのか」という問いかけは魅力的である。「まちづくり」による地域のコミュニティの醸成、そのプロセスは、そこで生きる人たちの「生き方」と繋がる、そしてその「生き方」の構築の延長線上において初めて、「都市計画」との有効的かつ友好的な握手がありえる、という考察は、なるほどと思わせるが、やや寛容に過ぎるというか、甘い話ではある。実際には、都市の中で、次々と大切な心象風景が失われ続けている。もう少し強い論理の構築が必要なはすだ。なお、最後に、自らの立場(アカデミックな場所にいる人々)で何ができるのか、について考察を加えている点も、評価したい。当事者であろうとする姿勢、意識が、レポートを引き締めている。
●亀元啓道
「ベルリン/ミッテ地区」
【講評】一つの詩のような、あるいはまさにベルリンの地下のクラブで流れている、強くしなやかな、心地よい反復を繰り返す低音のグル―ヴが紙面の裏から聴こえてくるような、そんなレポートである(言い過ぎか)。「都市計画」と「まちづくり」は相反するものではないとして、目標と目的を持った「都市計画」と、予想できない、自然発生的な「まちづくり」の両者の並立が必要であるとする。「都市計画」は「常に何かが欠けている」存在だからこそ、「まちづくり」の契機を孕んでいる、という理解は、正しい。まちをつくるとは、確かにそうしたプロセスだ。ただし、両者の関係は時とともに、変化していってしまう。自然発生的であったものを人々がプロセスとして、モデルとして意識した瞬間に、それは自然ではなくなっていってしまうことが多々ある。さぁ、どうしようか。
以下の二編は、内容については物足りなさが残るものの、まちの変化や歴史に着目し、自分なりにしっかりと評価を試みている姿勢に好感を持ったレポートです。
●遠上春香
「湘南台 今と昔」
【講評】写真を用い、実際のまちの具体の変化に基づいて立論している点が特徴である。湘南台では、学生をターゲットにしたまちづくりが進んだ一方で、高齢者の方などにとってはあまり住みやすいまちになっていないこと、街並みが明るく統一感のあるものへと磨かれ、車道が広くなり交通が便利になった一方で、よく育っていた街路樹がなくなってしまったことなどを指摘しているが、様々な人の立場からまちを見て、様々な価値同士の相克を捉えながら、それらを調整し、まちのありかたを構想していくことは、都市計画やまちづくりの基本である。SFCに通う今後の3年間、こうした視点から湘南台のまちに注目し続けて欲しいし、もし、やる気があれば、ぜひ、自らまちづくりのひとつの主体となって活動してみて欲しい。
●藤野祥佑
「新宿区歌舞伎町のまちづくり」
【講評】歌舞伎町のまちの成り立ちから、現在の「歌舞伎町ルネサンス」までを視野に入れ、民間と行政という主体に着目しながら、歌舞伎町のありように自分なりの評価を加えている点が良い。これまでの経緯の中で、「「まちづくり」が「都市計画」に負けた」歌舞伎町では、現在も「行政主導」が目につき、「民間」の姿が見えないと書く。しかし、ここでいう「民間」とは一体誰のことだろうか?土地所有者、商業者たち、国内外の資本、来訪者…様々な人々が歌舞伎町に関わっている。そうした状況において、「まちづくり」の主体はどのようにあるべきか、もう一つ、考察を深めて欲しいところである。
以上です。
おわらが灯る越中八尾と富山都心部再生への道程
9月2日から4日まで、研究会合宿ということで、中島+学生5名で、中島が以前、まちづくりのお手伝いをしていた越中八尾を訪ねました。そう、ちょうど「おわら風の盆」の真っ最中でして、普段は比較的静かな越中八尾の旧町は、全国からの来訪者で溢れかえっておりました。旧町それぞれ自分たちの町(街路空間)を舞台として、おわらを踊り、演奏することを楽しみ、それを多くの人に見せ、楽しませることをも楽しむ地元の方々のポジティヴな姿勢に、今回もまた、魅せられたのでした。また、商工会の方々、西町の方々には宿舎を提供して頂いたり、ごちそうになったりと、大変お世話になりました。有難うございました!
八尾滞在の中日の日中は、富山都心部に足を延ばし、その再生のための様々な取り組み、つまりポートラムやセントラムといった新たな公共交通の導入、昭和初期に生まれた富岩運河の船溜まりを市民のための憩いの場に生まれ変わらせた富岩運河環水公園、総曲輪の中心に新たに生まれたグランドプラザなどに代表される公共空間の再生や創造の現場を見て歩きました。富山市は本当に頑張っています(郊外の大規模商業施設立地規制なども含めて)。ただ、それでも総曲輪の商店街の惨状はどうもまだあまり変わっていないようで、都心部の再生、ないし再創造には、まだまだ時間がかかるということを実感したのと同時に、「商店街の活性化」ではない、現代都市の都心部の将来像胎生が否応なく予感されたわけです。
ということで、いろいろ勉強になりました。
鞆の浦に行ってきました
また、ちょうど7月31日の土曜日には、東京大学の鞆プロジェクトチーム(都市工学専攻、社会基盤学専攻、建築学専攻、社会文化環境学専攻の4専攻の大学院生たちによる有志チームです)が、港沿いの茶屋蔵再生ワークショップを開催しており、地元の子供たちを巻き込んだ棚の羽目板作成を行っていました。こちらにもお邪魔させて頂きました。茶屋蔵の修復を担当する東大OBたちと現役学生たちの頑張りで、とても有意義な催しになっていました。一人一人のひと夏のひと時の記憶が、茶屋蔵の長い時間の中にしっかりと刻まれました。
個人的には鞆に行くのはもう40回目くらいでしょうか。10年以上通い続けていますが、毎回、発見があります。どんなまちも、日々、変化しています。今回も、昨年閉業してしまっていた対山館のリニューアル工事の一環で、道越の古い民家が解体(表だけ保存するようですが)されている最中だったり、沼名前神社参道から御幸方面に抜けていく旧鞆劇場裏手の角の大樹が伐採されてしまっていたり(注意して見るのはしばらくぶりだったので、もうだいぶ前のことかも)、しかし一方で大田家住宅は相変わらず進化を遂げていて、皿山の登り窯の調査も素晴らしい成果が出ていたりと、とにかくまちがそのまちなりの速度で時間を重ねていっています。その様子に、いつも刺激を受けてばかりなのです。
松居さん、有難うございました。東大の鞆プロジェクトチーム、お疲れ様でした(9月25日、26日には地元の方々とともに鞆の魅力を発信するイベント「ヨルトモ」開催ですね)。
環境デザイン・フィールド・ワークショップ2010履修者募集中!
政策メディア研究科のプロジェクト科目「環境デザイン・フィールド・ワークショップ」は、今年度、以下の要領で開講します。
トルコ都市・集落巡礼
「都市や集落の風景を語るのに、トルコほど豊かな材料を提供してくれる国も少ないだろう。古い歴史を誇り、地形や気候が変化に富み、民族的にも多様なこの国土には、色々な生活の様相が見られる。」(陣内秀信、1990)
古代ギリシャ・ローマ時代以来、常に地中海地域の一つの中心であり続けている、「都市の中の都市・イスタンブール」、トルコ伝統の街並みが今も谷合いの斜面上に広がる「世界遺産小都市・サフランブル」、そして地殻変動が生み出した奇岩に寄り添う「カッパドキアの集落・遺跡群」を中心に、トルコの都市・集落を巡り、環境と人間との関わり、気候や地形といった自然基盤と人間の生み出す都市空間・都市文化の時間的な重層性、有機的な関係性を体感し、知見を広める。
研修日程:2010年9月9日~9月19日
研修先:イスタンブール、サフランボル、カッパドキア、アンカラ等
説明会:2010年7月19日、7月20日 何れも昼12時40分~ ε11教室にて
追加説明会開催! 2010年7月22日 12時~ τ11教室
2010年7月27日 11時~、12時40分~ ε12教室
ポスター https://urbanics.sakura.ne.jp/goingurbanics/wp-content/uploads/2010/07/fieldworkshop2010.pdf
※学部生は自由科目としての履修になりますが、参加を歓迎いたします。
※第一次申し込みの期日は7月24日になります。説明会に参加できない人で、本授業に興味関心のある人は中島まで個別に連絡を下さい。
浅草聖天町のまちづくり準備会開催
2010年7月8日、浅草聖天町会の皮革関連産業のオーナーさんたちにお集まり頂き、第一回まちづくり準備会を開催しました。学部生たちが「皮革のまちの店構えの現況」、「山谷掘公園の現況」、「隅田公園の現況」について、資料をもとに発表し、意見交換を行いました。今後、聖天町のまちづくりを担う地元振興会の設立とその活動の支援を引き続き行っていく予定です。