横浜防災建築街区ツアー 第8回前現代委員会
年末の12月27日、第8回前現代委員会を横浜の防火建築帯の一つ、吉田町ビルの一階、飯田善彦建築工房ライブラリーカフェで開催しました。発表は東大の北垣先生(構造・材料)、と横国大の藤岡先生(建築計画)。これで2年間にわたる研究会は終了し、あとは3月までに報告書をまとめて、自分たちの考えを世に問います。研究会後は横浜防火建築帯ツアー。更にその後の野毛の浜幸の馬鹿鍋で交流会。やはり現場で話を聴くと、理解度が違ってきます。防火建築帯、そしてディープな横浜に魅了された一日でした。
神戸の闇市 埋もれた記憶に光 神戸大院生が研究(神戸新聞、2012年12月25日夕刊)
現代の都市・建築遺産の計画学的研究特別研究委員会のメンバーの村上しほりさんの研究が神戸新聞にて報道されました。非常に地道な歴史研究にこうした光が当たるのは、嬉しいことです。とりあえず、下記、記事から思いっきり引用します。
http://eonet.jp/news/kansai/kobe/article.cgi?id=60168
神戸の闇市 埋もれた記憶に光 神戸大院生が研究
(12月25日 16:20)
戦後、神戸の省線三ノ宮‐神戸間(現在のJR線)の高架下にできた闇市の形成過程や変容を追う研究に、神戸大学大学院人間発達環境学研究科博士課程(歴史社会学)の村上しほりさん(25)=神戸市東灘区=が取り組んでいる。全国各地で闇市の研究があるが、神戸で体系的にまとめた史料がほとんどないといい、村上さんは戦後の埋もれた歴史に光をあてる。
1945年8月15日~48年6月30日の神戸新聞に目を通し、関連記事を抽出。当時を知る商店主らにインタビューなどをして昨年修士論文をまとめ、日本建築学会の優秀修士論文賞を受けた。
当時、政府運営の鉄道は省線とされ、その後、国鉄に。論文によると、高架下の闇市は約2キロにわたり、屋台が約1500軒が並び、「三宮自由市場」と呼ばれた。高架南側の通りと緑地帯はバラックが埋め尽くした。
当時の本紙は闇市の様子をこう描く。「『甘い甘い』『ひとつ五円』の呼び声、渦巻いて蝟集(いしゅう)する黒山の群衆、車道にはみ出た男女の間を警笛を絶え間なく鳴らして通り抜けようとするトラツク、ジープ」「人目をひくのは妙な饅頭(まんじゅう)を二、三十個ばかり入れた籠を抱へる行商人…」
占領期に進駐軍向けの売店で物資購入や特別配給の権利があった中国、台湾、朝鮮人は高価で甘い食べ物を売り出すことができた。露天商は引き揚げ者らの受け皿となり、露天商組織が形成された。組織対立、警察の取り締まりが頻繁にあり、新聞には「取締隊が初の出動 禁制品に粛正のメス」「露店粛正始まる“神戸名物”に終止符」という見出しが躍った。
立ち退きになった業者によって、現在のJR三ノ宮駅東に通称「国際マーケット」が誕生。朝鮮人の商人組織が取り仕切り、菓子やゴム靴を売る問屋数百軒がひしめいたという。同駅南にできたバラック飲食店街「ジャンジャン市場」は港湾労働者らでにぎわった。
村上さんは現在、範囲を兵庫区新開地にも広げて調査、「神戸の闇市の特徴は在留外国人の存在感があるところ。焼け野原から形成され、衰退していった過程を追いたい」と話している。
修士論文の入手希望者は村上さん(shihori.myu@gmail.com)へ。
[神戸新聞社]
『いいビルの写真集 WEST』と『東京建築 みる・あるく・かたる』
前現代委員会のスター、高岡伸さんが引っ張るBMC(ビルマニアカフェ)の渾身の一作『いいビルの写真集 WEST』(2012年7月刊行)があちこちで話題になっています。また、もう一人のスター、倉方俊輔さんの新刊『東京建築 みる・あるく・かたる』も、先週、発売になったようです。新世代新感覚のまち建築ガイド本です。
「前現代の都市・建築 遺産としての可能性を問う」、盛況
9月13日、建築学会大会二日目の午前中に開催されたPD「前現代の都市・建築 遺産としての可能性を問う」は、予想以上に多くの方に集まって頂き、広範な議論を行うことができました。資料集も完売です。議論の内容は、近いうちに『建築雑誌』に報告が掲載される予定です。改めて、この「前現代の都市・建築」への関心が高まっていると肌に感じました。
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第5回前現代委員会とPD「前現代の都市・建築 遺産としての可能性を問う」開催のお知らせ
6月18日の午後、建築会館にて、第5回前現代委員会の研究会を開催しました。今回は、中野茂夫さんが「松江の官庁街形成」について、小山雄資さんが「鹿児島を中心とした住宅協会の活動」について、最新の研究成果を発表して下さいました。質疑では、まさに都市計画史、住宅政策史、近現代建築史を横断する、「前現代」の本質を問うような議論が展開されました。特に今回は改めて「前現代」における「地方」の重要性が浮かび上がったように思われます。
さて、私たち前現代委員会では、9月の建築学会大会において、下記のようなパネルディスカッションを企画しております。ご関心のある方は、是非、ご参加ください。これまでの前現代委員会での議論を紹介しつつ、さらに視野を広げていきたいと思っております。
■タイトル :「前現代」の都市・建築 遺産としての可能性を問う
■資料 : あり
■日時 : 9月13日(木)9:00~12:30
■会場 : 名古屋大学
■司会 倉方俊輔(大阪市立大学)
■副司会 中野茂夫(島根大学)
■記録 小山雄資(鹿児島大学)・石榑督和(明治大学)
プログラム
■1.主旨説明 中島直人(慶應義塾大学)
■2.主題解説
❶設計者として語る前現代遺産 伊達美徳(まちプランナー)
❷昭和の都市、建物の魅力をどう伝えるのか? 鈴木伸子(編集者、ライター)
❸前現代の都市・建築遺産の都市史・都市計画史的意義とその現状 初田香成(東京大学)
❹身近にある前現代建築の魅力とその活かし方 高岡伸一(大阪市立大学、ビルマニアカフェ)
■3.討論
コメンテーター
北垣亮馬(東京大学)・青井哲人(明治大学)・中尾俊幸(株式会社アール・アイ・エー)
「前現代」は「現代」ではないが歴史として画期が確定したわけでもない、近過去のある時期を指す造語である。40歳以下の委員で構成される「前現代都市建築遺産(の)計画学的研究【若手奨励】特別研究委員会」では、戦災復興期以降、霞ヶ関ビルが完成し、現行都市計画法が成立する1970年前後までを「前現代」期と設定し、この時期に生み出された様々な都市・建築空間の遺産価値やまちづくりへの活かし方について研究を進めてきた。
今世紀の都市は、そのありようを肯定するにせよ、否定するにせよ、事実としてストックに埋め尽くされている。そして、我が国における建築ストックの多くは「前現代」期に建設されたものである。しかしそうしたストックは、エイジング=老朽化という図式の下、特に次なる大震災への備えの意識から、耐震性の不足という理由ですでに更新の対象となり始めている。我が国の都市の近代は「歴史を消し去る歴史」であったが、これからもその歴史を繰り返すのだろうか。少なくとも、今まだその多くが健在のうちに、それらの遺産価値について議論し、それらを使い続け、都市を成熟させていく、都市生活を豊かにしていくアイデアを用意しておきたい。
近年、前現代の遺産に対するまなざしは確実に豊かになってきている。かつての近代建築の遺産評価の主流であった作家論や意匠論ではなく、都市論、生活論との結びつきをより強めている。日常生活の中に、これらの「少し古い」ものを自然と取り込む人が増えてきている。
本パネルディスカッションでは、委員会での議論を土台としつつ、開かれた議論の展開を目指す。実際に設計した立場、魅力を伝える立場、それを日常生活に取り込み、活用を試みる立場、再開発事業に携わる立場など、異なる立場から、前現代の都市・建築遺産とは何か、それをどう評価し、どうまちづくりに活かしていくのかを議論したい。
大阪で前現代委員会開催
さる3月3日に、第4回前現代委員会を大阪にて開催しました。会場は、登録文化財にもなっている昭和2年築の芝川ビル。発表者は大阪市立大学の高岡さんと倉方さん。高岡さんはビルマニアカフェとアンダーコンストラクションフィルムアーカイヴの活動を通して、従来の保存や遺産といった意識とは全く別の、戦後ビルとの日常的な付き合い方、楽しみ方について、倉方さんも近著『ドコノモン』にこめた問題意識を主軸に、戦後建築史の構想について、それぞれ大変中身の濃い発表をして頂きました。研究会後は、これも高岡さんのコーディネートで、何と重要文化財の綿業会館の特別見学、さらに船場センタービルを抜けて、千日前では『ドコノモン』にも取り上げられている美園の(元)キャバレーの見学、そして打ち上げ。大阪の底力をまざまざと見せつけられた、そんな一日でした。
東日本大震災と都市・集落の地域文脈 -その解読と継承に向けた提言-
日本建築学会地域文脈形成・計画史小委員会でまとめた「東日本大震災と都市・集落の地域文脈 -その解読と継承に向けた提言-」が公開されました。都市計画遺産研究会、前現代研究会からは、清野、田中傑、中島、中野が寄稿しております。「都市計画遺産」からの提言も含まれておりますので、是非、ご一読ください。
「東日本大震災と都市・集落の地域文脈 -その解読と継承に向けた提言-」
前現代委員会の進捗
今年度から始まった日本建築学会の若手奨励特別研究委員会ですが、現在、委員が順次、発表を行うかたちで進めています。10月28日は、田中傑さん(芝浦工大)と初田香成さん(東大)に防火建築帯を中心とした商店街の建築の話、12月2日には、西成典久さん(香川大)と中島伸さん(練馬まちづくりセンター)に東京の戦災復興区画整理について、充実した発表を行って頂き、参加者で全員で前現代遺産の特質について議論しました。二回の発表に共通して、「基準化」というのがひとつのキーワードのようです。今後もこうしたかたちで研究会を続けていきますが、来年の建築学会大会では、ここでの成果をもとに、パネルディスカッションを予定しています。眼前の空間に蓄積された何気ない時間の塊を、現在、そして将来の都市生活の幸福に結びてけていく回路を探求していきます。
前現代研究委員会が始まりました。
さる8月21日に、日本建築学会「前現代都市・建築遺産(の)計画学的検討」【若手奨励】特別研究委員会、略して前現代研究委員会の第一回会合を、建築会館にて開催しました。委員全員が集まり、それぞれの関心について紹介しあいました。今後、委員が順番に研究成果を発表していき、来年の建築学会大会ではPDを開催して、前現代、つまり戦後から1960年代くらいまでの都市・建築遺産をどう今後の建築的創造や都市計画・まちづくりに活かしていくのかについての議論を深めていきたいと思っています。
建築学会特別研究委員会 委員公募中!
「前現代の都市・建築遺産の計画学的研究」が日本建築学会[若手奨励]特別研究委員会の一つに採択されました。
つきましては、下記の要領で委員を公募しております。
5月20日が締め切りですので、奮ってご応募下さい。
前現代の都市・建築遺産の計画学的研究 [若手奨励] 特別研究委員会 委員公募
前現代の都市・建築遺産の計画学的研究 [若手奨励] 特別研究委員会では、委員を公募いたします。参加を希望される会員は応募要領に従いふるってご応募ください。
1) 主査: 中島直人(慶應義塾大学)
2) 募集人員: 若干名
3) 応募者の資格: 2011年4月1日時点で40歳以下であること
4) 設置期間: 2011年4月~2013年3月
5) 委員任期: 承認日~2013年3月
6) 活動目的:
我が国の都市空間を大きく改変したのは全国主要都市において実施された戦災復興計画である。さらに耐火建築促進法、再開発三法(防災建築街区造成法・市街地改造法・住宅地区改良法)の制定を背景に、初期のビル遺産に代表される多くの建築遺産が生み出された。ところが、戦後生まれのこうした市街地や建築物の遺産価値については、十分な議論がなされてこなかった。本委員会では、戦災復興計画が立案された終戦直後から現行都市計画体制の確立した1960年代までを「前現代期」と定義し、その間に生み出された空間遺産について、①都市景観、②建築遺産の視点から整理し、価値付けを行うとともに、その保存・活用に向けた方法を検討することを目的とする。
<応募要領>
下記の (1) (2) を記入の上、E-mailで提出ください。
(1) 本特別研究委員会名:(前現代の都市・建築遺産の計画学的研究 [若手奨励]
特別研究委員会)
(2) 応募者について:
1) 会員番号、氏名、年齢、所属、連絡先住所、同電話・FAX・E-mailアドレス
2) 専門分野 (なるべく詳細に)
3) 本特別研究委員会で果たせる役割
締切: 5月20日 (金) 必着
採否: 本特別研究委員会で選考し、学術推進委員会で承認のうえ本人に通知します。
提出先: 日本建築学会 前現代の都市・建築遺産の計画学的研究 [若手奨励] 特別研究委員会委員公募係 E-mail: hamada@aij.or.jp Ardenska operace