科研基盤(B)「都市計画遺産」の概念構築と実態把握(平成23~25年度)
研究の目的
景観法の制定、歴史まちづくり法の制定に象徴されるように、我が国の都市づくりでは、歴史的な都市景観への配慮が一般化しつつある。しかし、そこで対象とされている「歴史」とは、いわゆる「伝統的」な建物で構成される街並みや古来からの地形が生み出す眺望景観が殆どである。一方、「近代的」な遺産については、近年、近代建築や近代化遺産などが注目され、保存措置が取られるようになってきているが、近代都市計画が生み出してきた都市空間については、その歴史性が積極的に評価されるようになっているとは言い難く、保全や活用の対象となることは殆どない。しかし、市街地更新より、既存ストックを重視した市街地保全を基調とする都市計画への転換が求められている現在、近代都市計画が生み出してきた都市空間という既存ストックを歴史遺産という観点から評価し、その重要度に応じて必要な保全的措置や活用方策をとっていくことが望まれる。本研究では、こうした状況を背景として、1919年の都市計画法制定以降、現在までに都市計画法制度によって生み出されてきた都市空間の実態を把握した上で、その遺産的価値について検討し、保全活用手法の見通しを明らかにすることを目的とする。従来の歴史遺産の概念から外れる都市空間を新たに歴史的に価値付けるために「都市計画遺産」という概念を構築する。現代的な視点から見れば高い水準でなくても、当時としては高い理想を抱き、創造された都市空間も少なくない。一見すると何気ない近代都市の景観や空間に新たな視線を注いでいきたい。
研究メンバー
研究代表者
中島直人(慶應義塾大学)
研究分担者
初田香成(東京大学)
中野茂夫(島根大学)
西成典久(香川大学)
佐野浩祥(立教大学)
津々見崇(東京工業大学)
研究期間
平成23年度~平成25年度(3カ年)