第3回都市計画遺産セミナー「都市計画史は「ニュータウン」に何を見ているのか」開催

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テーマ:都市計画史は「ニュータウン」に何を見ているのか -イギリス研究最前線との対話

日時:2015年11月7 日(土)15:30~17:30

会場:フェニックス・シーガイア・リゾート2階オーチャード北

主催:都市計画遺産研究会(日本都市計画学会共同研究組織)

基調講演:マーク・クラプソン(ウェストミンスター大学)

話題提供:中野茂夫(島根大学)、有田智一(筑波大学)、篠沢健太(工学院大学)

司会:中島直人(東京大学)

記録:中島伸(東京大学)

 

趣旨説明(中島直人)

都市計画遺産研究会では、都市計画遺産セミナーとして、海外から都市計画史研究者を招聘し、海外の都市計画史研究の状況を伺い、日本の都市計画研究の可能性を探ることを目的に開催している。今回は20世紀後半最大の都市計画遺産のひとつである「ニュータウン」を取り上げ、日英を比較しながらこれからの都市計画史研究の展望を議論したい。

 

基調講演「New Towns in Planning Studies in England」(クラプソン)

イギリスの田園都市運動は、1903年のレッチワース、1920年のウェルウィンによって、新しいコミュニティづくりの先駆けとして始まった。田園都市運動に導かれたNT建設は第二次世界大戦後に結実し、3つのNT法が戦後つくられるが、重要なものは、戦災復興としての重要な側面を持つ1946年法と、最大級のNTであるミルトンキーンズを生んだ1965年法である。今日ではNTに270万人がイギリスでは住んでいる。

戦後イギリスのNTにおいて、近隣住区計画、交通及びコミュニケーション計画、住商分離のゾーニングなどが新しい重要なNT建設の価値として提供された。近隣住区計画については部分的には成功し、ラドバーンシステムによる歩車分離は旧市街の混在型地区に比べて成功したと言える。最大規模のミルトンキーンズでは、自己完結性としては最も成果を挙げたと言える。しかし、現在の絶望的な住宅不足と都市計画協会(TCPA)によるロビイング活動にも関わらず、NTのような大規模なプログラムにわずかな政治的意図しか働いていない。

 

話題提供1「近隣住区論の導入とニュータウン」(中野)

日本のNT建設は、戦時下の新興工業都市計画からはじまったとされ、内務省の指導要領には近隣住区の考え方が取り入れられていた。それ以前にも内田祥三らが手がけた大同、勝田などの都市計画において近隣住区論の影響が読み取れる。この近隣住区論の受容が日本の導入過程の根幹になったと見てよい。日本にとって、田園都市論が自然豊かな住宅地のイメージとして定着した理論だったのに対して、近隣住区論は都市計画の具体化の理論であり、日本の実情に合わせた段階的展開があった。

 

話題提供2「 筑波研究学園都市を対象とした「日本における都市計画理論の実践」の検証の意義」(有田)

日本では通常郊外ベッドタウンとしてNTが成立してきた。そこで筑波の自立型都市の構想、実現は重要である。現在筑波が直面している構造転換課題として、①東京の過密抑制という従来の目的の喪失と自立都市圏としての持続可能性、②サイエンスクラスターとしての存在意義の転換期、③均衡のとれた田園都市の実現、④計画、開発における国主体から自治体、市民主体のマネジメントへの移行、⑤これまでの都市計画、設計基準の有効性の検証と時代変化への対応が挙げられる。

 

話題提供3「地域文脈の視点からの郊外住宅地の再編」(篠沢)

千里NTを事例として、現代の郊外住宅地の再編と再生のための潜在する自然環境構造を解読した。近代的建設により弱められ、失われた空間組織と社会組織のつながり、建設後の人々の住みこなしにより生じた環境の改造や改善の意義を読み取ることが不可欠である。千里NTでは、NT全体で計画単位としての「谷」の継承、住区レベルではため池をベンチマークとする地形の継承、団地レベルでは地形の連続性と変換点の継承が、各スケール、事業段階で行われていた。

コメント(クラプソン)

イギリスでは近隣住区論は1960年代には有効になっていたが日本では必ずしもそうではなかった。地形的な問題が土地利用に大きく影響していた。千里NTでは、地元の農業の影響が気になった。イギリスでは都市開発に大きな反対を受けていた。筑波の自立型都市を目指すことは日本の他の都市においても共通するだろう。筑波の建築水準は高い。日本のNTは密度の問題に他国よりも適切に対処できているのではないか。

コメント(篠沢)

農家がNTに反対する傾向だが、時代が下ると農地利用が減り反対も減る。そして計画の自由度が上がるが、反対譲歩によるため池を残すなど条件がつき、それが魅力的な空間になった。

コメント(有田)

筑波の最初のマスタープランは文脈を無視して理想的に書いたことで、地元農家の大反対があった。当初、インフラ移住者の苦労があり、これらをまとめた記録集もある。近隣センターが重要だった時期もある。NTも時代毎に成長している。

コメント(中野)

日本の高密なNTは設計標準等によってつくられているが、評価は分かれるところ。日本らしさはまだ研究蓄積が浅いが、当時の計画単位を理解することが重要。

コメント(中島直人)

人口、住宅不足の状況が日英では大分異なり、NTの都市計画史研究をする意義も大分異なりそうだ。

コメント(会場から)

日本は既にNTに内在した持続可能性があるのに、継承されずに変更されてしまうことが課題ではないか。

コメント(会場から)

日本の都市計画技術が大きく力をかけたのは、土地取得の点にある。イギリスは比較的簡単だったようだ。今後日本も土地が余り始める。土地取得について比較したい。

文責:中島伸(東京大学)

 

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