成熟社会 都市ストックの再編
12月 19th, 2011

【書評】レム・コールハース『錯乱のニューヨーク』

 ニューヨークのマンハッタンが形成された過程と当時の様々な計画が紹介され、ニューヨークという都市が持つ過密な文化やそれを支える大衆の欲望などが描かれている。

 ニューヨークの開発は1811年にシオメン・デウィット、グーヴァナー・モリス、ジョン・ラザフォードの3人がマンハッタンを13×156のブロック分割する計画を提案したところから始まった。都市を一からつくる際には無機質なブロックに分割し、1ブロックを最大単位としてそれぞれが独自に開発し競争力を高めることが必要であると考え方であった。しかしそれに対して著者は「都市はもはや相補的な都市的断片の寄せ集めではなくなり、各ブロックは基本的に自らを頼りとして、島のように孤立して存在することになる」と当時の理念を批評している。

 この本では様々な建築家のエピソードが紹介されている。レイモンド・フッド(1871-1934)は過密化が問題となっているマンハッタンについて次のような意見を述べた。

「未来のマンハッタンはタワー都市になる。個々の敷地を気まぐれに乱暴に上方拡大する代わりに、複数のブロックから土地を動員してより大きな敷地の上にビルを建設することになるだろう。こうして複数のブロック上に建つ複数のタワーの周囲に生まれるスペースは建てられない部分として残され、これによってタワーはそれ自身の完全性を手に入れるとともに他から独立することができる。」

フッドは1ブロックが開発の最大単位となっている状態から複数のブロックが統合されてタワー化が進み、タワー以外の場所はオープンスペースになりグリッドの形が崩れていくと予想した。そして実際にロックフェラ・センターなどにおいてこのような考え方が実現し、グリッドに対する意識が変化したと著者は述べている。

 当時の建築家や市民がニューヨークという都市を通してどのような夢を抱いていたのかということが貴重図版やイラストと合わせて描かれておりとても興味深かった。

レム・コールハース『錯乱のニューヨーク』、筑摩書房、1995年
文責:宮下貴裕(総合政策学部3年)

by naoto.nakajima | Posted in 書評・文献紹介 | 【書評】レム・コールハース『錯乱のニューヨーク』 はコメントを受け付けていません |

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